668 リーダーの器 ページ11
フェイに急にそう声をかけられ、「あ、いや」とお茶を濁そうとして──それが私にかけられた言葉でないと気が付いた。
フェイが顔を覗き込んでいるのは天馬だった。天馬も、どこか浮かない顔で神童と太陽のことを見ているみたいだった。
「そ、そんなことないよ！」
「だったらいいけど……いつもの天馬じゃないような気がする」
指摘された天馬はそれを否定せず、無言で稲妻のシンボルマークに目を向けた。
「──キャプテンの役割って、なんだと思う？」
キャプテンのやるべきこと。担うべき力。天馬はそのことについて悩んでいるみたいだった。
統率力をもってしてみんなを引っ張る。コミュニケーションを積極的にとって、選手の気持ちを理解する。パッと思いつた答えは、しかし容易に頭に浮かんできただけにどれも薄っぺらい気がした。間違いではないのだろうけど。
「改めてそう聞かれると、考えちゃうね」
フェイも顎に手を当てて考え込んでいた。
会話に割り込んだトーブは「キャプテンはボスだから、威張って命令してればいいんだぞ！」なんてことを言った。トーブの言いたいことはわかるが、それで上手くいったら世話はない。
私は気持ちを切り替えた。ぼやぼやしている場合ではないのだ。
──私に、私だけにできることを、本気で探さないといけない。
＊
ミーティングルームのモニターには、1から11までの番号が映し出され、それぞれに時空最強イレブンの力を手にした選手の名前が書かれている。空欄なのは9、10、そして11。
「これで、時空最強を満たす選手は九人となった。だがまだまだだ！ 敵はますます力を増している！そこでさらなるチームの強化を目指して、次のミキシマックスのターゲットを決定する！」
前に立ったワンダバが言うと同時、大介さんが浮かび上がった。
「では、時空最強イレブン、次なるターゲットは――まず！」
9の力──野獣の獰猛さと賢者の頭脳を持つ「ファンタジックリベロ」。
10の力──絶対的な勇気と揺るぎない実行力で大地をも味方にする「キングオブミッドフィルダー」。
名を挙げるとすれば、マスタードラゴンとアーサー王。
発表されたターゲットの名前に、みんなの間には訝しげな空気が漂う。私も聞き間違いかと思ったが、大介さんが発言を訂正することはなかった。
クロエだけが、みんなの意図を図りかねるようにきょろきょろと視線を行ったり来たりさせている。
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年9月2日 11時
