658 古代の王 ページ1
「僕は君のこと嫌いだけど、力を貸してもらうよ。僕の仲間たちのために……！」
ロビンの表情は変わらない。しかし宿主の言葉に応えたのか、次の瞬間にその身体は光の束へと変化した。
「──《アームド》！」
青い輝きを身にまとったフェイは、闘士の姿そのものであった。力強いオーラに、私たちはしばし目を奪われる。
「ミキシマックスと化身アームドの同時使用だと？！ 消耗が激しいはずなのに、大丈夫なのか……？」
ワンダバの懸念をよそに、フェイは駆けた。パーフェクト・カスケイドが反応できない速さで。
刹那、ゴール前へ躍り出たフェイ。そのまま踏み込み、シュート体勢に入る。
「『王者の牙』！」
「『キーパーコマンド16』」
海をも割る牙は、立ちはだかる技を食い破った。ボールがネットに突き刺さる。
得点を知らせるホイッスルが鳴り、キーパーの顔に初めて動揺が浮かんだ。
1-9。点差はまだまだ絶望的だが、この一点は私たちに光明をもたらした。
ここで前半終了。私たちはアームドを解いたフェイのもとに駆け寄った。
「フェイ、化身を……！」
「別に、隠してたわけじゃないんだ。化身を使いたくない理由があって……」
「そっか。でも凄いよ、フェイ！」
フェイは「ありがとう」と天馬に頷きかける。
そうして黄名子と目が合うと、力強く微笑んだのだった。
「A、足……」
ハーフタイム中。外に出てきたクロエが小声でそう言った。
私はそっと右足首を撫でる。じんじんとした痛みがあった。ソックスの下の皮膚はどうなっているだろうか。
狩屋に交代してもらえれば、痛みは最小限で済むだろう。だけど。
「ごめん。あと少しだけ、無茶させて」
私は立ち上がった。
ここで終わりたくなかった。まだやれる。みんなの力になりたい。
クロエは何か言いかけたけれど、最後は私の気持ちを尊重してくれたのか、頷いて私の中に戻っていった。
後半戦、両チームが位置に着く。
「みんな！ チャンスはハーフ後で、体力が回復している今しかない！ 一気に攻めるよ！」
「よし、化身アームドで一気に攻めあがる！」
フェイの言葉に、神童が拳を握り締めて言った。
天馬、神童、剣城、私、錦、フェイの六人が同時にアームド状態に入る。
ミキシマックスと化身アームドを使い分けることによって、戦略の幅は広がる。そこを見出したがゆえの作戦だ。
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年9月2日 11時
