653 サッカーへの思い ページ46
胸の内に焦りがくすぶっていくのがわかる。この前と同様一方的な試合展開を見せつけられるのは、もう御免だというのに。
あの化身──プラズマシャドウに歯向かうことを、本能が拒否している感じがする。不条理な存在を前に、私たちは成す術もない。
「このままやられっぱなしで終わるか！」
しかしトーブが目に強い光をたたえ、真っすぐ敵に向かっていった。
「『太古の戦士ジャガウォック』──『ハンティングランス』！」
オフェンス技でボールを奪うことに成功する。
そのまま剣城へのセンタリング。しかしどういうわけか、パーフェクト・カスケイドのディフェンス陣は棒立ちのままだった。
「攻撃の機会を与えよう。キーパーの経験値を上げるために」
「──舐めるな！ 『菊一文字』！」
強力なシュートが放たれた。決まる──そう確信したのも、わずか数秒のことだった。
「『キーパーコマンド16』」
淡々と繰り出された必殺技の前に、なんと菊一文字は止められてしまう。
そんな……ミキシトランス技が、こんなにいとも簡単に破られてしまうなど。
「レイ・ルク！ オプティカルファイバーを実行せよ！」
「了解。実行」
それを好機と見たか、サカマキが指示を出す。
パーフェクト・カスケイドが動いた。その緻密な動きで繰り出されたのは、必殺タクティクス。
捉えきれないほどの素早さ、そして威力。立ち向かおうとしたみんなが次々に弾き飛ばされていく。
迫りくる攻撃に、私の首にはじっとりと汗が滲んだ。
前までの私なら、恐れをなして足を竦ませていただろう。だけど今は違う。これ以上、得点を重ねさせるわけにはいかない！
「『悠久の覇王クロエ』──『ブラストビート』！」
しかし決死の反抗は、鼻で笑われるように破られた。
瞬きしたその刹那に、敵は私の攻撃を避けて駆け抜けていく。そうして……五点目を追加した。
その後もオプティカルファイバーは猛威を振るう。選手一人一人が、放たれた矢のような勢いを持っている。
「どうして通じないんだ……！」
「フェイ」
活路を見いだせずほぞを噛むフェイに、声をかける者がいた。黄名子だった。
フェイと並走しながら、その翡翠色の瞳を真っすぐに見つめて言う。
「フェイのサッカーへの思いは、そんなものなの？」
フェイは虚を突かれた表情になった。後ろで会話を聞いていた私も、目を瞬かせる。
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年8月1日 10時
