648 躍進する力 ページ41
駆けた瞬間。私の足はボールをしっかりと捉えていた。やった……取れたんだ！
そのまま霧野にパス。繋がった。そのままトロオドンを抜き去る。
プレーが繋がり出した。目の前に光明が見えた気がした。これならいけるかもしれない。
「うおおお！ 『太古の戦士ジャガウォック』！」
トーブが化身を出し、二体同時に迫ってきていたトロオドンに向かっていく。
しかし相手の勢いに負け、弾き飛ばされてしまった。
さすがに二匹童子は無理かとも思ったが、トーブはそれから何度も果敢に切り込んだ。トーブが尻餅をつく度、外野からのビッグの鳴き声が耳に入る。
「おらは、負けねえ……！」
瞳には確固たる意志が宿っていたが、しかしさすがに身体は言うことを聞かないのだろう、トーブは片膝を地面につけた。
「これ以上は無理だ！ 少し休ませないと……！」
フェイの言葉に、しかしトーブのお父さんは首を横に振る。
トーブは──立ち上がった。膝に手をつき、よろめきながら。
「ビッグには……情けねえとこ、見せらんねぇぞ！ アイツには早く元気んなってほしいんだ……そんためにはおら、なんだって……なんだって！」
雄叫びを上げて自身を奮い立たせるその様は、私たちの思いを後押しした。
「行くぞ！！」
再び駆け出したトーブはやはり疲れ知らずというべきか、トロオドン二匹に対して善戦を繰り広げている。
その姿を見たフェイが、拳をぐっと握りしめた。
「僕も、負けてられない……！」
「――今度こそ行くよっ！」
しかしその時、黄名子がそう言って走り出した。
ボールを持ったトロオドンと黄名子との距離が縮まっていく。
その背中から滲み出た黒いオーラは、今度は勢いを衰えさせることなく──日の光を背負う巫女の姿へと変化した。
「『暁の巫女アマテラス』！」
化身を具現化させた黄名子は、鮮やかな動きでボールを奪う。その顔に花の咲いたような笑みが広がった。
「やった──成功やんね！」
「凄いよ、黄名子！」
「見事な化身だ！」
天馬と神童の言葉に、黄名子はぴょんぴょんと飛び跳ねながらこちらにやってきて、「うちにもできたー！」と私の手を取った。
思わぬ覚醒に、みんなの士気も上がる。このままいけば、パーフェクト・カスケイドにも勝てる。そんな雰囲気が私たちの背を押していた。
ただ一方でフェイの表情は、なぜか険しいままだった。
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年8月1日 10時
