646 二人でなら ページ39
「いや、こいつらはおらの仲間たちだ。みんなどうしたんだ？」
と。トロオドンたちがやってきたのと同じ方角から、トーブのお父さんが飛んできた。
彼はそのまま息子に何やら語りかける。言葉を聞いたトーブの顔に、ぱっと笑みが咲いた。
「──え、ほんとか？！」
「なんて言ってるの？」
「おらたちの特訓に協力するって言ってるぞ！」
私たちの間に驚愕が広がる。
練習相手が増えるのはありがたいことだ。しかしそれがまさか、恐竜だなんて。
「恐竜にサッカーなんてできんのかよ？」
もっともな疑問を口にしたのは狩屋。
それに答えるように、三体のトロオドンがパス回しを始めた。後ろ脚を使って起用にボールを蹴っている。
信じられない光景を、私たちは口をぽかんと開けて見つめていた。
「パスしてる……」
「しかも、速い！」
「こいつら、おらたちの試合見てたみたいだぞ！」
──見てた、って……一度見ただけでここまでできるものなのか。
呆ける私たちに、信助が説明を加える。
「トロオドンは身体の比率に対して脳が大きいんです。中生代で一番頭のいい動物って言われています」
つまり、このくらいは朝飯前ということらしかった。
「やろう、みんな！」
天馬の声に、みんなは駆け出した。
私も胸の内で覚悟を決める。恐竜との特訓でパーフェクト・カスケイドを打ち破る力を手に入れようというのもそうなのだが、もう一つ、秘かな決意が生まれていた。
「神童、ちょっといい？」
私はみんなの方へ向かおうとする神童を呼び止めた。
そして自分の頭の中の考えを話す。突発的な思いつきではあるのだが、一応前々から考えていたことではあった。その時は「できたらいいな」くらいに思っていたのだが、今ははっきりと「やりたい」という意志に変わっていた。
「──合体技？」
神童は目を丸くして、私の言ったことを繰り返した。
二人でシュート技を編み出す。それが私のした提案だった。
「敵は凄く強大。スピードを手に入れなければいけないっていうのもその通りだと思うけど、相手を抜いた後に確実に得点を決められるような突破力が欲しいと思ったの」
先日剣城が、沖田さんの電光石火の力を手に入れているが、試合中はどんな展開を見せるかわからない。剣城がマークされたとしても得点を狙えるような、万全の布陣を敷いておきたかった。
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年8月1日 10時
