【イナクロ】君へ贈る旋律第十四楽章【神童拓人】 (ページ38)

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「危ないところだった。アルノ博士が助けてくれなかったら、俺たちはレイ・ルクにマインドコントロールされていた……」

決して油断をしていたわけではなかった。強敵と戦うために、私たちも特訓を重ねて強くなっている。

だけどあんなに歴然とした差をつけられるとは思っていなかった。勝てるビジョンが浮かばない。しかし勝たないとサッカーは取り戻せない。

「もう無理ですよ、あんな人たちと戦うなんて……」

地面に大の字に寝転がった速水に否を突き付けたのは、トーブだった。

「いいや、おらは燃えてきたぞ！あんな強えやつら倒せたら、すっげぇウホウホだと思うんだ！」

その瞳には高揚感に似た煌めきが宿っている。

トーブは腕をぐるぐると回し、天馬に向かって意気込んでみせた。

「おらもっともっと強くなりてぇ！で、ぜってぇ勝つぞ、あいつらに！」

その姿につられて、私たちの中にも徐々にやる気がみなぎっていく。

「……あの気持ち、俺たちも見習わないとな」

「そうだよ！パーフェクト･カスケイドに勝てなきゃ、サッカーは取り戻せないんだ！ここで諦めるもんか！」

神童と天馬の言葉に、私たちは覚悟を決めた。

逆境に立たされた時ほど強くなる。それが私たち──雷門なのだ。

「それに、まだ七番目と八番目のミキシマックスもできていない。まだまだ僕らは強くなれるはずだ」

7の力──自由自在に空間を生かす、空を制する「フライングディフェンダー」。

8の力──太古の力を宿し、その牙の力は海を割る「ダイナミックミッドフィルダー」。

それがこの時代で、私たちが手に入れるべき力。立ちはだかる壁は高く分厚いが、全員で立ち向かえばきっと乗り越えられる。

「よし、特訓だ！」

特訓という天馬の言葉に、トーブは「がおー！！」と、天高く拳を突き上げた。

＊

それから芝生の広場に移動した私たちは、どのような方向性で特訓するかを話し合った。

円陣の中央に立つワンダバは、腕を組んで思案しながら言う。

「パーフェクト・カスケイドに勝つには、まずあのスピードにどう勝つかだ。しかし一体どうすれば……」

言い終わらないうち。複数の足音がしたかと思えば、私たちは一瞬にして十体の恐竜に囲まれていた。

「すっごーい、トロオドンだ！こんなにたくさん！」

信助の言葉に、「感動してるばあいじゃない」とクロエがツッコミを入れる。

身体が縮み上がるの感じたが、しかしトーブは笑って一歩前に出た。