【イナクロ】君へ贈る旋律第十四楽章【神童拓人】 (ページ33)

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「おめえ……」

「レクイエム。亡くなった人が天国にいけますようにって、いのる曲」

答える声音は穏やかだった。クロエは最後にもう一度、両手の指を組んで目を閉じ、ロックスターの冥福を祈った。

「ありがとな、クロエ。ロックスターもきっと安らかに眠れるぞ」

トーブは目尻に残っている涙をごしごしと擦った。そうして私たちの方へ向き直る。

「──天馬！おらにもサッカー教えてくれ！
　おらには父ちゃんやロックスターみたいに、でかい爪も牙もねえ！でも強くならなきゃいけねぇんだ！強くなって、ビッグを守んなきゃいけねえんだ！！」

赤く腫れた瞳には、確かな決意が宿っていた。ロックスターの仇を取るため、そして遺されたビッグを守るために。

天馬は頷いた。確認するまでもなく、他のみんなにも異存はなかった。

私たちは連れ立って、トーブの家へ向かって歩き出す。

ビッグは歩きながら何度も、ロックスターのお墓の方を振り向いていた。

＊

誰かの命が潰えても、太陽が昇れば同じように朝がやってくる。

私たちは広場で、トーブと共にサッカーボールを追いかけていた。トーブにくっつくようにして、ビッグもいる。

「天馬！」

剣城から天馬へのパスを、なんとトーブは見事にカットしてしまった。さすがの身体能力だ。

教えられたことを吸収する速度も凄まじい。第六感というか、そういう勘の良さが並ではなかった。

「問題は、ロックスター以外のミキシマックスの相手を見つけないといけないということだな」

隣にいた神童が呟く。まったくもってその通りだった。

「もっと遠くに行けば強い恐竜も見つかると思うけど、時間は限られてるし……」

そもそも誰がオーラを受け取るのかすら決まっていない。完全に振出しに戻ってしまった状態だった。

と、その時。

「ほーっほっほっほ！」

高らかな笑い声が辺りに響いた。

急な大声にビクリとして、周りを見回す。案の定というか、岩場の上にアルノ博士がいて、私たちを見下ろしていた。

「フェイ、トーブのことがわかったぞ！」

トーブのこと。私は神童と顔を見合わせて首を傾げたが、すぐに思い至る。

恐らくフェイとワンダバが、トーブのことについて調べてもらうようアルノ博士に依頼していたのだ。白亜紀に存在するはずのない人間の正体について。

博士は咳払いを一つして、語り始めた。