628 星降る夜に ページ21
私たちは頷いた。
とりあえず目標は決まった。縄張りを束ねるロックスターの力を借りる。どうやってオーラを頂くかが問題ではあったが。
「トーブ、案内してくれる？」
「いいぞー……腹いっぱいで眠く──」
天馬が話しかけたトーブは、横になって早々と眠り始めてしまった。
「寝るの早っ」という水鳥のツッコミも聞こえていない様子で、気持ちよさそうに寝息を立てている。
「仕方ない。ロックスターに会いにいくのは、明日にしようか」
フェイの言葉にみんなが同意した。陽も傾き始めている。
私たちは私たちで、野宿する場所を探さなければならなかった。腰を上げかけた時、トーブのお父さんが嘴で地面を指し始めた。
「ここで寝ろって言ってるのかな？」
「みたいだね。僕たちだけで野宿するよりも安全かな？」
確かに、ここなら他の恐竜に襲われるような心配はしなくて済みそうだ。
男子は大きな葉のベッドで、女子は洞穴で眠ることにした。
＊
慣れない環境でぐっすりと眠ることはできず、私は何度目かの浅い眠りから覚めた。
夜空には、降るような無数の星が瞬いている。夜明けはまだ遠いようだった。
ふと、左隣に寝ているはずのクロエがいないことに気が付く。寝床はまだ暖かかった。
掛け布団代わりにしていた大きな葉っぱを、音を立てないように剥ぎ取る。
周りを見回すと、黄名子に剣城、そして天馬とフェイもいなかった。みんな眠れなくて散歩でもしているのだろうか。
わたしはそっと寝床を抜け出し、歩き出した。
はっとするほど、新鮮な空気が辺りに満ちていた。星が世界から音を吸い取ってしまったかのように静かだった。
これが、人の生まれる前の時代。ともすれば大自然の雰囲気に呑み込まれそうだった。
五分ほど歩くと、開けた場所に出た。そこでは天馬とフェイが特訓をしていて、夢中でボールを追いかけている。
『敵の力はフェイのティラノの力を凌いでいる』という大介さんの言葉を思い出した。もしかしたらフェイは、自分の実力が及ばないことを悔やんでいるのかもしれない。
と。大きな植物の陰に隠れるように、黄名子がいるのを見つけた。まるで二人のことを見守るように。
「黄名子」
私は黄名子を驚かせないよう、わざと足音を立てながら近づいて呼びかけた。
黄名子はこちらを振り向いて、ちょっと笑ってみせた。私はその隣に腰を下ろす。
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年8月1日 10時
