625 過酷すぎる道のり ページ18
「頼むぞ！」
トーブが言うと、アラモサウルスは背を向けて、尻尾をこちら側に伸ばしてきた。
……まさか。
「ついてこい！」
トーブは、ひょいとアラモサウルスの尻尾に飛び乗った。恐竜を橋にするというのか。そんな無茶苦茶な。
怖気づく一同を、「早く来い！」とトーブが急かす。
いつまでもここにこうしているわけにもいかないので、私たちは覚悟を決めて一歩を踏み出した。
アラモサウルスの皮膚は硬く、十数人の人間が乗ってもその身体はびくともしなかった。それでも恐々と歩みを進める。
やはりと言うべきか、信助だけが興奮した様子で先を歩いていく。
「うわあ！ 僕今アラモサウルスの上にいるんだ──」
と、はしゃいだ拍子。信助は足を踏み外してしまった。
あっ、と叫んだ時にはもう遅かった。信助はそのまま谷間へ落ちていく……と思いきや、アラモサウルスの尻尾がそれを受け止めた。
私たちは胸を撫でおろす。こんな調子が命がいくつあっても足りないかもしれない。
頭のところまで歩を進めた時。私の後ろを歩いていたクロエが、不意にその場にしゃがみ込んだ。何をしているのかと思いきや、アラモサウルスを労わるように頭を撫でていた。
「ちょっと、クロエ……！」
「だって恐竜にさわれることなんてこれからないでしょ」
それはそうだが、さっきの信助みたいにうっかり足を滑らせたら助からないかもしれないのに。
そうハラハラしていたが、クロエはすぐに立ち上がって対岸まで渡った。なんていうか、段々肝が据わってきたような気がする。
「ありがとな。また今度遊ぼ！」
全員が渡り終えたのを確認すると、トーブはそう言って大きな果実を掲げた。アラモサウルスはそれをくわえ、咀嚼する。
「すごい、恐竜と友達なんだ！」
「他にもいっぱいいるぞ」
それからもトーブの言う「友達」──恐竜の力を借りて、私たちはトーブの家を目指した。
パキケファロサウルスの頭突きで木を倒し、川をまたぐ橋を作ったり。
アンキロサウスルの尻尾で、道を塞ぐ岩を粉砕したり。
彼らは「ありがとうな」「助かったぞ」とトーブに言われると、嬉しそうに目を細めていた……ように見えた。
「着いたぞ、ここがおらの家だ！」
そうしてたどり着いたのは、小高い崖の上だった。眼下には川と森が広がっている。
周囲には食料の備蓄と寝床、水場らしき場所と小さな洞穴があるだけだ。想像していた「家」と比べるとだいぶ小ぢんまりしていた。
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年8月1日 10時
