622 雄大な自然 ページ15
現代から遡ること約6805万年の白亜紀。
眼下に広がる景色に、私たちは息を呑んだ。人工物が一切ない──人間がまだ誕生していないのだから当たり前だが──雄大な自然が眼下いっぱいに広がっている。遠くには火山の黒煙がもうもうと立ち上り、空に吸い込まれていっていた。
そうしてあちこちに生息する恐竜たち。信助は一体一体指さして名前を挙げながら興奮していた。
──まさか肉眼で恐竜を見ることになるとは思っていなかった。どの図鑑で見たのよりも迫力があって強そうだ。
「それじゃあ早速、ミキシマックスできそうな恐竜を探しに行くぞ！」
キャラバンが着陸してすぐ、大介さんが言った。それを太陽が制止する。
「待ってください！ 僕たち、このままで外に出るんですか？」
クロエが同意するように「そうだそうだ」と小さく呟いた。
私たちの服装は雷門のジャージ。恐竜から見た人間はただでさえ物珍しいというのに、こんな格好をしていたら絶好の餌食になってしまう。
「ならば私に任せろ！ ワンダバスイッチ・オン！」
そうして例の如く、ワンダバの手によって衣装チェンジ。
私たちはシンプルな麻の服を身にまとったのだが。
「何の解決にもなっていないような気がする……」
太陽の言う通り、恐竜たちの鋭い爪から身を守れそうな格好でもなかった。
「やはり彼らの時代に行ったら、その時代になじむ格好をしないとな！」
そもそもこの時代に人間はいないので、なじむ格好もなにもないと思うのだが。
しかしつべこべ言っても始まらないので、私たちは恐竜探しへ赴くことにした。
一歩外に出た瞬間、草木と水と獣の匂いが混ざり合って、私たちを押し包んだ。
くるぶしの高さまで生えた芝生を歩く。見たことのない植物や果実に、みんなどこか圧倒された様子で歩を進めていた。
「あれなに？」という、クロエの久々のなぜなに攻撃にも私は答えることができない。せいぜい「なんだろうね……」と呟くばかりだ。
そうして、あちこちを闊歩する恐竜たち。
頭のいいトロオドン、身体の大きなアラモサウルス、水中を泳ぐイクチオサウルス。信助の解説のおかげで、私たちもどんどん恐竜に詳しくなっていった。
そんな風に周囲を見回しながら進んでいると、先を歩くワンダバから𠮟責が飛んできた。
「お前たち、何をぼーっとしている！ 注意深く進め！ ちょっとの油断が、命取りになること──」
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年8月1日 10時
