621 未定のターゲット ページ14
「信助、ものしりだね」
クロエに褒められた信助は、「えへへ〜」と得意げに笑っている。
ふと天馬が思い出したように、大介さんに言った。
「でも恐竜のオーラなら、もうフェイがティラノサイウルスの力を持っています」
「それでは不十分だ。もはや敵の力はフェイを凌いでいる。ティラノサウルスよりも更に凶暴で、パワーのあるオーラが欲しい！」
話題に上ったフェイは、ちょっと肩を落とした。
だけどそんな恐竜がいるのだろうか。恐竜の王といえば、真っ先にティラノが思い浮かぶのだが。
「その恐竜のなまえは？」
クロエが尋ねた。大介さんは自信ありげに、少し間を置く。そして、
「わからん！」
全員、椅子からずっこけた。なんで今ちょっと溜めたんだ。
「そんな適当な！」
「適当ではない！ 恐竜についてはまだまだ解明されていないことだらけなのだ。ティラノサウルスを超える恐竜は必ずいる！」
速水の抗議に大介さんはそう言い切った。確かに未解明の恐竜は存在したかもしれないが、見つけられるかどうかになると放ちは違ってくると思うのだが……。
「じゃあ今度こそはうちかAがミキシマックスするやんね！」
「えっ」
黄名子の言葉の中にさりげなく自分の名前が加えられているのを聞いて、私は身を硬くした。
時空最強の力を手に入れてチームの戦力になりたいという思いは揺らがない。だけど恐竜とミキシマックスするというのには、一抹の不安があった。
「でも恐竜とだよ？」
「牙とか生えちゃうかも」
葵と茜にそう言われ、黄名子は腕組みをして数秒考える。しかし、
「うーん……まあそれもいいやんね！」
あっけらかんと言ってのけた。細かいことは気にしないらしい。
今回タイムジャンプするメンバーは──神童、霧野、私、信助、太陽、錦、剣城、天馬、黄名子、フェイ、狩屋、速水となった。
アーティファクトは恐竜の化石。メンバーがキャラバンに乗り込み、化石が台座にセットされる。
「恐竜ってどんなのかなあ、おそってきたりしない？」
隣に座るクロエが尋ねてくる。
私は答えに詰まった。相手は恐竜、説得に応じてくれる相手ではない。逆鱗に触れれば私たちなど一瞬で蹴散らされるだろう。
「襲われないように、頑張って立ち回るしかない……かな」
「ふうん」と頷いたクロエは、恐竜たちに思いを馳せるように視線を空中に向ける。
期待と不安を半々ずつ胸に抱いて、私たちは白亜紀へと飛んだ。
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年8月1日 10時
