619 パーフェクト・カスケイド ページ12
戦国時代での一幕が頭に浮かんで、私は「ああ、うん」と口ごもった。思い出すだけで恥ずかしいけれど。
私も神童と同じく、占いとかジンクスを熱心に信じる方ではない。
だけど、どっちからキスしたとか、いちいち考えなくてもいいくらい、これからたくさん触れ合えたら──それはとても幸せなことだと思う。
「好きだよ、拓人」
「俺もだ、A」
私たちはもう一度、口づけを交わした。
これからもずっと一緒にいられますように──という、ささやかな願いを胸に抱きながら。
「あ……見て」
窓の外、私が指さした先を視線で追った神童は、顔を綻ばせる。
東の方角には、雷門中のシンボルである稲妻のマークがはっきりと見えていた。
＊
翌日、ミーティングルーム。
私たちは改めて、これからの方針についての作戦会議を行っていた。
ザナークドメインは倒せたが、彼らはエルドラドの正式なチームではなかったため、歴史が元に戻ることはなかった。
ここからどうすればいいか。真剣な表情をしたフェイとワンダバが交互に口を開いた。
「こうなったらもはや、エルドラドを倒して歴史の改変を無効にするしかない」
「そのためには、エルドラドが持つ最強チームを上回る力が必要だ」
最強チーム。その言葉に私たちは生唾を呑み込んだ。
プロトコルオメガよりも、ザナークドメインよりも遥かに強いチーム。その名は──
「パーフェクト・カスケイドじゃ！」
突如割り込んできた声に、びくりと肩を震わせる。誰かと訝るまでもなく、アルノ博士がフェイの背後に現れていた。
「フェイ、まずいことになってきたぞ」
博士は前置きなしにそう言った。その表情には、いつもの飄々としたものはなかった。
「まずいこと、とは？」
「いよいよそのパーフェクト・カスケイドを投入してくるようじゃ」
ザナークドメインが倒されたことによってエルドラドは警戒を強め、サッカー禁止令のインタラプトをパーフェクト・カスケイドによってガードした、と。
つまり奴らを倒さなければ、サッカーは取り戻せない。
「逆に言えば、そのチームに勝てばサッカーを取り戻せる。そういうことですね？」
神童の言葉に、博士が頷いた。
パーフェクト・カスケイドが、私たちが倒すべき最後の相手になるのだろう。私はぐっと拳を握り締める。隣を見ると、クロエも同じようにして表情を引き締めていた。
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年8月1日 10時
