608 悠久の覇王 ページ1
「この試合、私たちが勝つ！」
「ほざけ！ お前ごときに何ができる！」
ユニフォームの、稲妻のシンボルを右手で握りしめる。
自分の背後から黒いオーラが生じてくるのが分かった。私の闘志に反応したクロエが、ゆっくりと身を持ち上げてくるのがわかる。
──A。あのときの答え、まだちゃんと言ってなかった。
答え。それは私がいつかの日に扉越しでクロエに伝えた言葉に対するものだった。
──私、Aといっしょに強くなる。Aの見るけしきに、私もいたい！
頭の奥で、歯車がかち合う音がした。その歯車は猛烈な速度で回転を始める。
クロエは──化身となって、強く大きく顕現した。その頭に、白銀の冠をいだいて。
それはまさに、王者の風格。
「『悠久の覇王クロエ』！」
風圧が、ユニフォームの裾をはためかせる。
身体の奥からは大きな力がとめどなく生まれていた。
「馬鹿な……化身が進化しただと？！」
ザナークの驚愕の声を聞きながら、私は両手を天高く上げた。そこに光の束となったクロエが収束し、私の身体を纏う鎧へと変化していく。
──これが、私たちの出した答え。どんなに強大な敵が立ちはだかろうと、どんなに道が険しくても、共に歩き続ける。
「──『デュルテバーン』！」
跳躍しながら放ったシュートは、不死鳥の如く猛々しい炎を纏いながら、ザナークの横をすり抜けてゴールへ向かっていく。
「『サンドカッター』──なにっ？！」
敵の必殺技をも焼き尽くし、ボールはそのままネットに突き刺さった。
2-2──これで試合は振り出しに戻った。
「やったぜよ、A！」
錦と頷き合ってから、私はアームドを解く。そうして黄名子の熱烈な抱擁を受け止めた。
「Aーっすごいやんねーー！！」
みんなも周りに集まってくる。
取れたのだ、一点を。それはクロエが私を信じてくれたから、みんながいてくれたからこそできた。
頬が緩むのがわかる。今のワンプレーは確かな自信となって私の中に残るだろう。
「Aとクロエの強い思いが、点をもぎ取れたんだ──あと一点、取り返すぞ！」
「「おうっ！！」」
神童の言葉に合わせて、みんなが鬨の声を上げる。
試合再開後、どちらも一歩も譲らぬ激しい攻防が続いた。
「この試合、負けるわけにはいかねえんだ──エルドラドのクソジジイどものためじゃねえ、俺のプライドが俺自身を許さねえ！」
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年8月1日 10時
