柱稽古 風柱の場合3 ページ42
休憩中、隣に腰かけた不死川が問う。
「A、あれなんだよ。」
「……あれ??」
質問の意図が掴めず聞き返してしまった。
「…里で上弦と殺り合った時の、顔の痣だァ。」
「痣……?」
あの戦いで痣を出すことに成功したのはAも分かっていた。だが、しらばっくれて躱す。
ここで教えて不死川にまで痣を出されたら困るのだ。寿命を縮めるのは己だけでいい。
「あー…わかんねェならいいけど。」
自分で自分のことは見れねェしなァ、と不死川は一人で疑問を消化できたようだった。
「柱合会議の時もずっと俯いてたし…お前大丈夫なのか?」
結局Aは御館様との対談後に泣いてしまっていた。眦は赤く染まり、それを隠すためにずっと下を向いて黙りを決め込んでいたのだ。錆兎や義勇には心配されたが、まさか不死川にまで気づかれていたとは思わなかった。
「気づかれてたんだ。」
「まァな。」
「柱合会議の前に御館様と話したの。それで…………その、あまりご容態が宜しくなくて。悲しくなっちゃって泣いたら眦が赤くなって恥ずかしかったから」
それが理由、とAは照れ笑った。
不死川は豆鉄砲を食らったような顔をしている。
「ん?どうしたの?」
「いや……お前、そんな顔で笑うんだなァ。」
「何それ、どういう意味よ」
「お前、いつも何か背負って苦しそうだから。」
背負って………不死川には、そう見えていたのか。
確かに、Aはずっと抱えている。
錆兎や義勇、他の皆の、“あったかもしれない過去の未来の骸”を抱え込んでいる。
本来持っていてはいけないものなのに。
「へぇ、不死川にはそう見えるんだ……。」
「隊士にはお前を神だなんだと崇めてる奴もいんだろォが。」
Aを、神の寵愛を受けし奇跡の柱を絶対として動く隊士は少なくない。ただでさえ背負う物が多すぎる紫苑にそれが如何に負担で重圧となっているかを不死川は何となく理解していた。
鱗滝Aは、絶対に間違える訳にはいかないのだ。正しい行動を常に求められている。
「今更だよ。」
「あァ、今更だ。
だから、ずっと苦しんでンだろォ。」
「……………。」
苦しいのか?
己は、柱となってから八年間ずっと苦しんでいるのか。
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kokona(プロフ) - クソデカ胸中ボイス大好きすぎますwww (2023年3月29日 0時) (レス) @page48 id: d3088186d6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あちゃん | 作成日時:2021年2月1日 16時