柱稽古幕間 炎柱の場合2 ページ37
その後目覚めた槇寿郎に酒をやめろ、息子を大事にしろとみっちり説教をしていたのである。
槇寿郎は正直Aをびびっていた。穏和な奇柱は怒ると意外と怖いらしい。
「兄上、失礼致します。お客様がきております。」
「……客?」
中からは、思っていた数倍弱々しい声が聞こえてきた。
杏寿郎が生死を彷徨い昏倒していたのは凡そ二週間、容態が安定してからも一月を超え眠り続けた。
目が覚め人と会話できるまで回復した頃はAが遊郭での任務を終え、刀鍛冶の里へ行っていた時期である。遊郭後Aと同じく休暇を貰っていた宇髄が杏寿郎の元を訪れた際には既にこの様な弱々しい状態だったらしい。
「こんにちは。鱗滝Aです。」
「なっ、Aか!」
ガタガタと扉を開ける。
着流し姿に、眼帯をした杏寿郎が出てきた。
声に反し、割かし動けている姿に少しほっとする。
だが、随分と痩せてしまっているような気がする。
「よもや、柱稽古中では無いのか?」
「私の稽古は一番最後だから、まだ誰も来てないの。」
杏寿郎はお疲れ様ね、と労る。
柱では無くなったものの人に教える事は出来るため、杏寿郎は柱稽古の一番始め、まずは全集中の呼吸 常中をできるように隊士を指導していた。
先日やっと一仕事終わったらしい。
「ああ、こんな俺でも役に立てて良かった。」
「“こんな俺”だなんて言わないの。」
どうやら杏寿郎は相当自信を失っているみたいだ。
呼吸が使えなくなり、炎の柱はいなくなってしまった。
歴史や矜持を重んじる彼がこうなるのも仕方がないのだろう。
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kokona(プロフ) - クソデカ胸中ボイス大好きすぎますwww (2023年3月29日 0時) (レス) @page48 id: d3088186d6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あちゃん | 作成日時:2021年2月1日 16時