柱稽古 音柱の場合2 ページ31
ああ、そういえばと宇髄はAへ向き直った。
「A。上弦の陸の戦いでは、本当に助かった。
嫁の事も俺の事も救ってくれて、ありがとう。」
「えっなに、急に改まっちゃって」
「正直お前がいなかったら、俺も錆兎も死んでいた。」
「そんなこと」
「本当に感謝している。」
「……皆の力だと思うよ。宇髄も錆兎も義勇も、勿論炭治郎と禰豆子も、誰か一人でも欠けたら勝てなかった。」
宇髄はあの日、初めてあんなにも取り乱したAを見た。
顔には憎悪を貼り付け、唯只管に鬼を斬り続ける。敢えて頸を斬らずに、苦しみを与え続ける。此奴にそんな悪逆非道な趣味があるとは思えないし、性格上そういった残酷なことを好むタイプでもない。恐ろしいことに無意識下でやっていたのだろう。
Aはもうボロボロだった、あそこまで動けていたのが不思議なくらいだったのだ。
宇髄もありったけの声を出して止めたが、全くもって制止を聞きやしない。普段目上の指示や作戦に忠実なAのそんな姿は、本当に初めて見たのだ。
そして、宇髄は此の耳で確と聞いた。
普段の可愛らしい声は何処へと思わせるような、煮え滾る憎しみを込めた怨声で。
「精々苦しんで死ね」と。
確かにAは言っていたのだ。
恐らく原因は、大怪我を負った錆兎だろう。
錆兎と義勇は、Aに何かあると分かりやすく焦るし取り乱す。.........所謂、ポンコツになるのだ。実際の任務でそうであったように。
……………Aも同じタイプだと思っていた。
いや、怒りに我を忘れるあの姿は、錆兎と義勇以上に酷いかもしれない。
まあ、それと同時にやはり奇柱は最強だったというのも改めて分かってしまったが。手負いの状態で上弦と渡り合い更に一方的に蹂躙し続けるなど正気の沙汰ではない。
「そういえばお前、もう少ししたら煉獄の所にも行ってやってくれ。」
「ああ……杏寿郎ね、落ち込んでた?」
「派手にな。」
「わかった、後で行ってみるね。」
彼の元では全集中の呼吸、常中を教えている筈。
そのうちやることがなくなるだろう。そのタイミングで向かおうと、Aは決めた。
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kokona(プロフ) - クソデカ胸中ボイス大好きすぎますwww (2023年3月29日 0時) (レス) @page48 id: d3088186d6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あちゃん | 作成日時:2021年2月1日 16時