【鬼滅の刃】紫陽花は輪廻を駆け巡る参 (ページ25)

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麻痺毒は水壺にいた間に身体の隅々を巡ってしまったのか、動きは酷く鈍かった。身体が抗っているのか、熱が出ている気がする。思わず熱さに唸った。

｢血気術一万滑空粘魚｣

周囲に現れた十の壺から、びちゃびちゃと無数の魚が飛び出てくる。魚は覆い被さるようにして一斉に此方へ襲いかかってきた。

｢俺の後ろに来い！！！！｣

叫んだ不死川の背後へ素早く移動する。
足は未だに鉛のように重たい。
呼吸に余裕が持てないAは、矢継ぎ早に息を吸っていた。
不死川も、背中越しのAの様子が明らかにおかしい事に気づいていた。
どうする、此奴をどう離脱させる。
離脱させたところで一人で上弦を相手にするのか。
不死川は頭を回らせたが、兎に角先ずはこの魚の迎撃である。

｢風の呼吸参ノ型晴嵐風樹｣

不死川が起こした竜巻が襲い来る魚を次々と葬っていった。Aも援護するように刀を打振るった。お陰で二人には一匹も辿りつかない。だが、玉壺は余裕そうな顔をして高笑いを振り撒いている。これは、まだこの魚に何かあるな。

ちらりと斬り捨てた魚を見遣ると、何らかの液体が見えた。辺り一面に飛び散り始めている。
Aは先刻の麻痺毒といい、此奴から放たれる物は浴びたら不味いもの…取り敢えずは毒だと判断した。
即座に対策の一手を取る。
鱗滝一門は判断がはやいのだ。

大きく身を引き、構えに入る。
不死川はその動作を見て邪魔にならないよう動いてくれる筈だ。不死川はそういう奴である。

｢＿＿＿＿風の呼吸陸ノ型黒風烟嵐｣

勢いよく振られた刀により渦のような風が起こり、周囲に散っていた液体が舞う。見事にAと不死川に当たらず地に付いたそれは、ジュウ…と焼ける音を放ちそして土へと消えていく。
Aが何かする事は分かっていたが、風の呼吸を使うとは思っていなかった不死川は目を見開いた。

｢なっ…！！！｣

鬼は、まさか一滴も当たらずに全て散らされると思っていなかったのか戦慄いた。不死川の舌打ちが響く。