【鬼滅の刃】紫陽花は輪廻を駆け巡る参 (ページ21)

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まずい、かなり遠くまで吹き飛ばされてしまった。

上弦の肆は頸を斬っても死なない。
事前の情報通りである。
あんな風に若返った状態で分身するとは思わなかったが。

炭治郎と禰豆子に任せておくわけにはいかないので、一刻もはやく戻らなければならない。
上弦の伍だってまだ何処に現れたのか分からないのだ。
今現在里には警備として常駐している隊士と、炭治郎の担当鍛冶の鋼鐵塚や里長の鉄珍を筆頭に数名の刀鍛冶がいる。
できる事なら全員守りたい。

ヒュンッ

｢…っ！！！｣

｢おや？｣

何かの気配を感じて、咄嗟に右へ飛び退いた。
ごろごろと先程まで自分のいた場所に壺が転がる。
己の見間違いでなければ、この壺から何かが飛んできた。

｢ヒョヒョッ、殺すつもりで攻撃したのに、よく今のを避けられたなぁ。｣
｢うわぁ…………………………｣

壺から、上半身のみにゅるりと出てきたのは上弦の伍。
本来目がある筈の場所に口があり、口がある筈の場所には目がある。その目には忌々しくもしっかり伍の文字が刻まれている。顔や身体の至るところから手が生えており、少しヌラヌラとしていて、正直見目が大変気持ち悪い。

｢ヒョヒョッ
初めまして、私は玉壺と申す者。
この私が神の手により高尚な作品にしてやろう。
貴様等鬼狩りを作品とした後には｣

聞く義理はない。
Aは玉壺へ向けて刀を振るうが、壺から壺へと移動されてしまう。
玉壺は、話を最後まで聞けと憤慨した。

此奴、移動がかなり速い。
壺は何処から出してるんだろうか。
近くにあった小屋の屋根上の壺に移動した玉壺はヒョッヒョッと奇妙な笑い声で此方を見下ろしている。
とりあえずまた移動されたら癪なので、足元の壺を割り、そのまま跳躍し屋根上の壺も叩き斬った。

｢よくも斬りましたねぇ、私の壺を……｣

鬼はわなわなと震え、審美眼のない猿めが！と怒りを露にしている。
壺から壺へ移動して逃げるということは、先程の上弦の肆とは違い頸を斬られたらまずいということだろう。

上弦の肆と違い、伍の情報は数少なかった。殆ど無いに等しい。何故なら、この戦いで生き残った炭治郎は上弦の肆のみとしか相対していないからである。

｢血鬼術千本針魚殺｣

玉壺の両の手から壺が現れ、右側の壺から現れた金魚が無数の針を飛ばした。Aは身を翻して躱す。