九十五 刀鍛冶の里編 ページ16
大きな木造家屋が並ぶ街道をゆっくりと散策する。
どの家も同じような造りではあるが、所々違う箇所を見極め、土地の把握をしなければならない。
現在Aは休暇と銘打って、刀鍛冶の里へ赴いていた。
最初は見回りという体にすると御館様に打診しようとしていたのだが、酷使した刀が刃毀れしていたので小細工無しに来ることができたのである。
それに、しのぶからまだ休めという圧もすごかった。
今は、後の戦いに備え周囲の地形の把握はしておこうと思い街を徘徊している。
ついでに此処へ来ている筈の三名とも顔を合わせておきたい。
つんっと、硫黄の匂いが鼻を掠めた。
此処には温泉もあるらしい。
疲労や怪我によく効くのだそうだ。
流石にゆっくり入る時間はないが。
普段なら剽軽な面を着けた鍛冶で賑わうこの里も、今は必要最低限の人間しかいない為静かである。
Aは此処に来る前に産屋敷邸へ行き、直接御館様と話をしていた。御館様はAの話を聞いて直ぐに事を進めてくれたらしい。
流石、判断の早い御方である。
Aが頼んだ二つをすぐに実行してくれていた。
まだ此方には足を踏み入れていないなと、Aは温泉の方まで向かうことにした。入る時間はなくともまあ見るくらいいいだろう。
「あっ」
「き、奇柱………」
「こんにちは。」
湯治場へ続く階段から降りてきたのは、兄そっくりの鋭い目付きに、鼻面を横一文字に突き走る大きな傷が特徴の大柄な男だった。
風柱である不死川実弥の実弟の不死川玄弥だ。確か炭治郎の同期である。
「玄弥だっけ、炭治郎と同期の。」
「………………。」
無視。
柱である己を無視するとは、中々肝が据わっている。
……と思っていたが、よく見ると耳が赤い。もしかして照れているのか?
「あれ、違った?」
「…はい、そうです
炭治郎なら妹と一緒に温泉に入っていましたよ」
玄弥は目は合わせずに、ぶっきらぼうに告げた。
「そっか、じゃあ炭治郎と禰豆子に会っていこうかな。
あ、玄弥」
「なんすか……」
「Aだよ、私の名前。覚えておいて。」
玄弥は答えることなく横をすり抜け民家が並ぶ町の方へ行ってしまった。
Aはそれを見送りつつ階段を登る。登りきったところに炭治郎がいた。背には禰豆子も。
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kokona(プロフ) - クソデカ胸中ボイス大好きすぎますwww (2023年3月29日 0時) (レス) @page48 id: d3088186d6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あちゃん | 作成日時:2021年2月1日 16時