toxic 6 ページ15
「おはようございます」
「二人ともおはよう。相変わらず仲良しだね」
こんなやりとりにももう慣れ始めていた。
同僚との同居生活が始まって早一ヶ月。
片割れの姿を見る事もなく、束の間の平穏が俺の元に訪れた。
ストレスの大半が片割れが原因だったため、ほとんどストレスを感じる事なく仕事に取り組めている。そのおかげか、今月の営業成績は上々で先日支払われた給料では、それとは別にボーナスまでもらった。
順風満帆。何一つ悩みのない生活に慣れ、この生活が当たり前の様に感じてしまっていた。
─────────────
某日。
今日も俺はいつも通り同僚と出勤して、取引先と商談を行った後に同僚と昼食をとっていた。
一緒に住みはじめてから距離が縮まった俺達は、最近では屋外に出て公園なんかで昼食を取るようになっていた。社内ではそんな俺たちで妙な噂をする人もいるが、関係は依然頼りになる友人だ。それは彼方も同じ事。
いつものように他愛もない話で盛り上がり、笑いながら朝詰めた弁当を頬張る。
最近の俺の、一日で一番楽しみな時間だ。
そんな時、ふと大通りが騒がしい事に気がついた。
同僚も気付いたらしく、なんだなんだと二人で騒ぎの方に目をやる。
敵が暴れているのだろうか。一瞬そんな事を考えたが、聞こえてくるのは悲鳴ではなく、どちらかといえばアイドルに向けるような黄色い声だ。
大通りから聞こえるとなると、その正体はパトロール中の人気ヒーローだろうか。
そう思った時だった。
多くのファンに囲まれているそいつが目に入った。
別に後ろめたい事をしているわけじゃない。
それなのに、都会の派手な建物を背景にしても尚目立つ紅白に、俺の顔はたちまち青ざめていく。
上手く息ができなくなり、額からは脂汗が滲み出る。
「轟？どうした？」
明らかに俺の様子がおかしい事に気がついた同僚が俺の顔を覗き見る。よほど酷い顔をしていたのか、俺の顔を見るなり目を見開いて驚いた。
「っいや、大丈夫…」
同僚を落ち着かせようとそう言う。
「大丈夫なやつはそんな顔しないって。具合悪いのか？」
だが、同僚は本当に優しい奴だ。
大丈夫だと虚勢を張る俺を心配し、背中をさすって気が動転した俺を落ち着かせようとしてくれている。
取り乱した息を整えるように大きく息を吸って、吐いて。
そうして俺は、もう一度あの大通りを見る。
────遠目からでもわかるその両目が、確かに俺を捉えていた。
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佐波(プロフ) - りら(元:白紙)さん» コメントありがとうございます…！不穏な雰囲気が出るよう比喩など工夫していたのでとても嬉しいです☺︎まだまだ稚拙な文章ではありますが、これからも拙作をよろしくお願い致します。 (2021年12月21日 7時) (
レス) @page21 id: c20f609501 (このIDを非表示/違反報告)
りら(元:白紙)(プロフ) - 佐波様の表現がとても好きで男主の首を真綿で締めていくような背がひんやりする雰囲気がとても好きです。私も字書きの端くれとして勉強させて頂きます。 (2021年12月21日 2時) (レス) id: 8a3a88a56b (このIDを非表示/違反報告)
佐波(プロフ) - 無名(ナナ)さん» コメントありがとうございます…！実際に感想をいただけてとても嬉しいです☺︎不定期な更新ではありますが、これからも何卒よろしくお願い致します。 (2021年10月8日 22時) (レス) @page15 id: af903ba2ba (このIDを非表示/違反報告)
無名(ナナ)(プロフ) - なんで...評価は1回しか押せないんだ...5万回くらい右側の星押してます、更新頑張ってください (2021年10月8日 11時) (レス) @page15 id: b78d925f50 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：佐波 | 作成日時：2021年9月23日 11時
