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カメラを持つ手が震え出した
レンズに映る先輩の姿はカタカタと揺れていて、
表情はまるで見えない、けど先輩は相変わらずドアノブを持ったまま私を見つめていた
震える手には限界がきて堪らずゆっくりとカメラを下せば、ずっと私を見つめていた先輩と目線が交わる
あの日ステージで見た色のない目とは違う
透き通った綺麗な目が私の目を捉えて、そのまま不思議そうに首を傾げていた
「…あの、すみません、勝手に入ってしまって」
「ふはっ、ごめんごめん、気にせんといてな？
そもそも俺やっていつもここ無断で来てるねん、
ほらここ防音やろ？やからギター弾いてもバレへんねん
せっかく昼休みやし、たんまり時間あるのにギター弾けへんなんて勿体ないやん？」
部活動紹介の時、演奏を終えたばかりの先輩がオーディエンスの顔を眺めていた時と同じように、
優しい笑顔を見せ、初めて聞くその声も柔らかく、
もはやあの色のない目をした先輩は、先輩の中にいるもう一人の先輩なのではないかと思う程、
それが先輩の魅力なのだと気づき、心臓をギュッと握られたかのように胸は締め付けられた
「でも、びっくりしたわぁ…こんなところ誰も来うへんからなぁ」
「…なんか、すみません、お邪魔であればすぐに消えますから」
「へ？…ははっ、はははっ」
ドアを閉めて中に入った先輩
背負っていたギターケースを床に下ろしながら私の言葉に目を見開き、
「へ？」と低い姿勢のまま私の顔を見つめるなり、そうやって楽しそうに笑い出す
綺麗な笑い声に驚きつつもやっぱり胸は締め付けられて、
それを紛らわすように、お腹に手を当てながらヘラヘラと笑う先輩に問いかけた
「私面白い事言いました？」
「いやっ、うん、消えんでええねん、
ははっまさかそんな事言うなんて思わへんかったから」
「…ここにいていいんですか？」
「ええに決まっとるやないか、
それに俺見てみたかってん、キミの写真」
「えっ？」
「あー、えっと、…名前、教えてくれへん？
嫌いなんやろ？ “カメラちゃん”って呼ばれるの」
先輩の言葉に私は驚きを隠せなかった
あの憧れの先輩に、私の存在を知っていただけていたその事実
嬉しさと困惑、色々な感情が一気に湧き起こる
ギターケースを床に置き切り体を起こした背の高い先輩を見上げ、
私は口を微かに開けたまま、無意識に息を止めていた
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なあちゃむ(プロフ) - コメントの返信ありがとうございました！桜さんの作品は自分の頭の中で映画のように綺麗に想像することができるので本当に素晴らしいです。桜さんの作品、すべて読ませていただきました。どれも素敵で、読み直した作品もあります。これからも更新楽しみに待ってます。 (2016年8月10日 8時) (
レス) id: 525c05de2b (このIDを非表示/違反報告)
桜(プロフ) - なあちゃむさん» 「また明日」っての方でもありがとうございます、とても嬉しいです、読んでくださる方の脳内で映像化されるような情景描写、美しく綺麗な世界になるように心掛けております、なのでお言葉とても嬉しく自信になります！書いてて良かったです、本当にありがとうございます (2016年8月1日 10時) (レス) id: 3a95ea47e4 (このIDを非表示/違反報告)
桜(プロフ) - 怜奈 桃ジャス民さん» 順調に進んでおられて良かったです、わかりました、応援していますね(^^) (2016年8月1日 10時) (レス) id: 3a95ea47e4 (このIDを非表示/違反報告)
なあちゃむ(プロフ) - 読んでいてその風景を思い浮かべることができました。ストーリーも本当に素晴らしくて、占ツクを読んで泣いたのは春紫苑が初めてです。本当に素敵なお話でした。また読み返します。 (2016年7月26日 17時) (レス) id: 525c05de2b (このIDを非表示/違反報告)
なあちゃむ(プロフ) - コメント失礼致します。初めまして、友達がオススメしているのを聞いて、久しぶりに占ツクにログインして春紫苑を読みました。私が期待していたイメージを遥かに超えて本当に素敵な作品でした。情景描写の美しさ、メンバーのキャラクター、すべてがイメージとぴったりで (2016年7月26日 17時) (レス) id: 525c05de2b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：桜
| 作成日時：2016年6月21日 1時
