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大学一年生になって数ヶ月しか経っていない私達はまだ幼かった
高校生らしさが残り、無邪気にやまない雫に笑って、
いつも通り二人歩幅を合わせて帰路を進んでいた
「A、雨宿りしよ」
あの日も大ちゃんは何かしら理由をつけて私を誘った
「いいよ」と頷いた私に、大ちゃんは嬉しそうに笑っていたのを覚えている
向かったのは今日訪れた場所と似たようなカフェ
あの時はお金がないからと二人で紅茶を分け合って、
フレンチトーストを半分こにした
「朝食か」って、大ちゃんはまた笑っていた
「A給料いつ？」
「25日、大ちゃんは？」
「俺15日、何に使うかもう決めたん」
大学生になって私達は新しくバイトを始めた
剣道もあるのに両立出来るのかと思ったが、
大ちゃんは何かをしていないと落ち着かない様子だった
家に帰りたくないというのも、一つの理由だったのかもしれない
「お父さんにネクタイ買ってあげようかな」と呟けば、
「ええなそれ」と大ちゃんは優しく目を細めた
「大ちゃんは、何に使うん」
そんな彼に同じ問いを投げかけてみた
どんな答えが返ってくるのか、この時私は頭の中で予想をしていた
大ちゃんの事だから剣道に関係するもの買うんやろな
そうだ、もっと良いもの揃えたい言うてたし
自信のあった私は餌を前にした犬のように答えを待った
息こそ荒げてはいないが、そんな私の様子に気づいた大ちゃんは一度伏し目がちに笑っていた
「俺ね、Aと行きたい場所あるんよ」
「私と？」
「そう、Aと」
息をのんで、私はその先の言葉を待った
その時は緊張よりも楽しみな気持ちが強かっただろう
大学生になった私達の新しい一歩となる気がして、私はワクワクしたのだ
旅行だろうか、それとも叶えられなかった遊園地だろうか
色々な事を想像したが、彼が行きたかった場所というのはもっと単純であり、
「俺、Aと岡山に行きたい」
もっと、残酷であった
「……岡山に、行きたいん」
反応が鈍くなったのはただ不意を突かれたから
それだけだと信じたかった私
動揺しているのが自分でもわかり、息の仕方を忘れていた
何処にいるのかもわからない流れ星を、
大ちゃんは探しに行こうとしているのかと
涙が溢れそうで、たまらなかった
嬉しいのか、苦しいのか、自分でもわからない程、
ただただ、喉の奥が熱くてたまらなかった
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桃子(プロフ) - 桜さんの作品が何年経っても大好きです。いつかまた藤井くんに会えたら嬉しいです。 (9月28日 22時) (
レス) @page9 id: 775802b2fa (このIDを非表示/違反報告)
セミマル(プロフ) - 初めまして。素敵な作品をありがとうございます。私も更新楽しみにしています。 (2023年4月10日 23時) (レス) id: 039923312a (このIDを非表示/違反報告)
きい - 初めまして。いつか続きが更新されることを願っています。 (2022年8月22日 7時) (レス) id: a320cf1b5c (このIDを非表示/違反報告)
ここ - はじめまして。この物語を止めてしまうのは惜しすぎます。私たちにとって価値ある作品です。私は何年も待ちます。 (2022年4月1日 8時) (レス) @page9 id: 4cb3a32bb7 (このIDを非表示/違反報告)
#moo(プロフ) - 初めまして。いつか続きが読める日まで、私も頑張ります。 (2022年2月24日 8時) (レス) @page9 id: 209c66b3b9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：桜
| 作成日時：2017年8月14日 23時
