「また明日」って 《赤》番外編

７ ページ7

.








「俺に娘さんをください」








男らしく、かっこよかった大毅はもういない


「よろしくお願いします」と頭を下げた父に、思いっきり顔を上げて、


また何度も「ありがとうございます、ありがとうございます！」と頭を下げていた


そして今、舞い上がった大毅が晴れた青い空の下、


声を上げて飛び跳ねたり、走ったり、


スーツなのに少年のようで、可愛らしく少し前で立ち止まりにーっと歯を見せてくれる









「俺の挨拶どうやった？」


「かっこよかったよ」


「ぃやったー！フウーッ！」







拳を空高くに突き上げて飛び跳ねる


そんな大毅に隣の家から出てきたトモが勢い良く抱きつきに来た









「大毅くんっ！」


「おおっトモ〜！おはよう！」


「おはようっ！Aおはようっ！」


「ふふっ、おはようトモ」








トモを抱っこした大毅がすごく優しく笑っていて、


腕の中のトモが「あのね、あのね、」と話し始めるのを嬉しそうに「ん？」と首を傾げ笑って聞いていた


その姿を見て、ああ父親になったらこうなるのかなって


私たちに子どもができたらこうなるのかなって


温かくて幸せな気持ち


それは大毅も同じだったみたいで


遅れて出てきた崇裕さんの腕の中へ行ったトモを見て、私を見て、「幸せやな」と呟いた









「…籍、大阪帰ったら入れにいこうな」


「うん、婚姻届貰わなきゃね」


「あっ、いやそれはもう書いてるわ」


「えっ？」


「…うん、もう書いてるねん、

あとはAの名前とか書いたら出せるから、帰ったら書いて？」


「…いつの間に、」


「絶対結婚するって決めてたし、思ってたし、」


「断ってたらどうしたの？」


「…そんな事考えへんわ」








「アホ」っていうからムッとした


自信があったという大毅、私も断る気なんて全くなかった


けど昨日崇裕さんと会った時には尋常じゃないくらいの危機感を覚えたという








「お前絶対一回は惚れたやろ、崇裕さんに」


「惚れてないよ、大毅と重ねた事はあるけど」


「Aを見る目がもうさ、そんな優しい顔する？ってくらい優しくてな、大事にしてくれとったんやなぁって」








「ええ人やなぁ」って、風に舞い散る桜に手を伸ばして捕まえる


3枚取れた桜の花びら


大毅は嬉しそうに「俺たちみたいやな」って、


いつかの流星のように写真を撮っていた









.

８→←６

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す