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「ずっと廊下におったら風邪引いてまうよ」
目線を合わせそう優しく声を掛けてくれた大ちゃんに頷き、
手を繋ぎ向かった教室はいつもと変わらず騒がしかった
「おはよう」と言葉を交わし合い、
いつもと変わらない人達が楽しそうに笑い合っていた
あのドラマ、来週どうなるんやろ
ああ、また英語の課題忘れてもうた
先生に怒られんで、放課後残されるかも
いつもと変わらない人達が、中身のない話で盛り上がり、
きっと今交わしているその会話も
彼等は明日になれば忘れているんだ
昨日、僕等はどんな話をしたっけ
そんな事を聞いたって誰も答えられやしない
けど私は覚えてる
昨日、藤井くんと雪だるまの話をした
彼は一度だけ幼い頃にお父さんと雪だるまを作ったらしい
一度だけ、幼い藤井くんよりもうんと大きな雪だるまを
その時彼の父親が言ったそうだ
これだけ大きければ、
きっと暫くは溶けへんとお前の友達でおってくれるよ
彼はその時に思ったという
ああ、きっとこれがお父さんと遊べる最後の日なんやって
彼の父親はいついなくなるかわからない友達だけを残し、
それ以来仕事ばかりで彼の事など野放しだった
それでもその時の藤井くんは嬉しかったという
「あの日の親父の笑顔だけは忘れられないんです」と
玄関の外で凍えきった身体をあたためるように抱き締めていれば、
彼は静かにそんな昔話をしてくれた
「ねえ、大ちゃん、…藤井くんはずっとひとりぼっちなんやって」
「俺達がおるやんか」
「うん、私達がいる
けど私達がおらな彼はずっとひとりぼっちなんや」
みんな幸せそうだ
何も知らないみんなはいつもと変わらず大きく笑って、
「今日も寒いね」ってカイロを交換こしあって小さくなって
「一限から数学やって」と肩を落とす
何も知らないみんなはきっと藤井くんがいてもいなくても変わらないんだ
毎日彼を囲って楽しそうに笑っていた彼等も、
停学処分を受けている彼が今ここにいなくても、
あの頃と変わらず、楽しそうだから
「なんで不幸になるのはいつも藤井くんなんやろ」
「彼奴が言ってた、親父を大切にしなかった罰当たりやって」
「どうして？ 藤井くんは親父さんを誰よりも大切にしてたよ」
こんな事を思うのは何度目だろうか
優しい人ほど苦しめる
神様はいつも意地悪だ
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くまりんご(プロフ) - 84話の流星と大ちゃんのくだりがとても泣けました、桜さんが書く世界観がとても好きです！！これからも頑張ってください！ (2017年8月16日 23時) (
レス) id: e2ac88fff8 (このIDを非表示/違反報告)
しほ - お話読ませていただきました！今までなったことないような、なんとも言えない気持ちになり、何度も何度も読み返してしまいました。これからも応援してます！ (2017年4月30日 12時) (レス) id: 3dfa1a26ca (このIDを非表示/違反報告)
フレンズ - この作品、すごく好きです！ 更新頑張ってください！ (2017年4月20日 14時) (レス) id: 1d5f3d8302 (このIDを非表示/違反報告)
CIEL - 更新、待っていました。流星くんと大吾くんの笑顔と涙が重なって…言葉にできないけれど、頭の中に残っています。これからも、楽しみに待っています。 (2017年3月9日 23時) (レス) id: ebf57fe415 (このIDを非表示/違反報告)
のんぴー(プロフ) - 桜さん、のんぴーです。受験が終わり久しぶりに読ませていただきました。私の持っている言葉ではうまく感想が伝えられません。これからも応援してます。 (2017年3月8日 23時) (レス) id: 4a04a2b822 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：桜
| 作成日時：2016年9月20日 19時
