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大きく震える体
強く抱き締めても彼に感覚は残っていないのだろう
私に腕を回す事も出来ない藤井くんは何度も小さな声で私の名前を呼んでいた
安藤さん、安藤さん
涙交じりの声でもやっぱり彼は泣いていない
冷え切った体を温めるように抱き締め続けても彼の震えは止まらなくて、
彼は少しも泣けないのに、私はずっと泣いていた
「なんでこんな事っ、…ご飯も食べへんで何してんアホッ」
「…安藤さんの事、探してた」
「は…？」
「二度寝、してたんやろな
起きたらおらんくて、誰もおらんくて、」
窓を開けたのはきっと彼の気が動転していたからだろう
そばにいて欲しかった
彼は誰かに甘えるのがとても苦手だ
一人になると悪い事ばかり考えてしまう
思い出すのも全ては不幸
私がいれば、大ちゃんがいれば、彼はその物事を忘れて笑っていられたから
なんかどうでもよくなってもうたわ
ああ俺このまま凍え死ぬんかな、けどまあ人間こんなんじゃどうせ死なへんやろって
そんな事ダラダラ考えてた
暴れたのかしらんけど散らばってる剣道着に言葉も出えへん
悲しいよな、大切な物ほど壊れやすいみたいやわ
宝物って呆気ないっすね、…ほんま 呆気ない
震えた途切れ途切れの声で彼はそう語った
大切な物ほど壊れやすい
その言葉に強く共感できた自分もそう語る藤井くんもなんて悲しい人間だろうか
みんなみんな壊れていく、失っていく
母親も ブレスレットも 剣道も
みんなみんな、私達の宝物だった
雪のように儚く脆い藤井くん
雪になってしまう前に、私は貴方を救いたかった
どれだけ自分がボロボロになったって、
どうして貴方は私に優しいのだろう
そう尋ねたらまた藤井くんは言うのかな
だから安藤さんやからって、何回言わすねん
そう言って笑ってくれるかな
「風邪ひくで、今の俺だと冷たいやろ、落ち着かへんやろ」
「落ち着きなんて今はええの、こんな時まで私の心配しやんでええの」
感覚が戻ってきたのか私の背中に腕を回し力いっぱいに抱き締めてくれる藤井くんは嬉しそうに笑っていた
「あったかいな、安藤さん」
甘く掠れた声が耳元から聞こえ、「あったかいね」と返す私にまた彼はクスクスと笑う
そんな藤井くんが学校から呼び出されたのは二日後の朝
「おはよう」と笑顔で交わし合えた、
それはそれは平和な朝でした
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くまりんご(プロフ) - 84話の流星と大ちゃんのくだりがとても泣けました、桜さんが書く世界観がとても好きです！！これからも頑張ってください！ (2017年8月16日 23時) (
レス) id: e2ac88fff8 (このIDを非表示/違反報告)
しほ - お話読ませていただきました！今までなったことないような、なんとも言えない気持ちになり、何度も何度も読み返してしまいました。これからも応援してます！ (2017年4月30日 12時) (レス) id: 3dfa1a26ca (このIDを非表示/違反報告)
フレンズ - この作品、すごく好きです！ 更新頑張ってください！ (2017年4月20日 14時) (レス) id: 1d5f3d8302 (このIDを非表示/違反報告)
CIEL - 更新、待っていました。流星くんと大吾くんの笑顔と涙が重なって…言葉にできないけれど、頭の中に残っています。これからも、楽しみに待っています。 (2017年3月9日 23時) (レス) id: ebf57fe415 (このIDを非表示/違反報告)
のんぴー(プロフ) - 桜さん、のんぴーです。受験が終わり久しぶりに読ませていただきました。私の持っている言葉ではうまく感想が伝えられません。これからも応援してます。 (2017年3月8日 23時) (レス) id: 4a04a2b822 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：桜
| 作成日時：2016年9月20日 19時
