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肩をどれだけ強く掴まれようと、
ベッドの端に背中を、押し付けられようと痛みなど感じない
押し潰されそうな程に痛むのは胸の奥
藤井くんの手は酷く震えている
その手に私の手を重ねると彼は瞳を揺らし離れようとするから
私は逃さぬよう後退る彼の手首を掴んだ
「なんで、…なんで藤井くんは叫んでくれへんの」
「…俺は弱いところ見せてるつもりや
道場でも親の時も、やなかったら助けてなんて言わへん」
「…でも、」
「ごめん、…夕飯、作ろっか
暗くなる前に買い物行こう」
そう言って今度は彼が私の手首を掴み足早に外へ出ようとするから
「待って」と私が大声をあげると再び背中に感じる衝撃
閉まったドアに押し付けられていると気づくのにそう時間は掛からなくて、
保健室の大ちゃんと今の藤井くんが重なって見えた
絡められた指は男らしく、近い距離で私を見下ろす彼の目はどこか怯えている
「…藤井くん、」
「今日だけ強がらせてくれやっ
そうでもせんと俺このまま安藤さんを襲ってまう」
「藤井くんはそんな事せぇへんよ」
「狂いそうやねん、剣道 まで失うなんて思いもせんかったから
好きにしてええ とか男に簡単に言うなや
殴るよりも酷い事され兼ねない
今やってそうや、安藤さんの力や逃げられへんねん」
逃げられないのはわかっていた
けど私は藤井くんを信じているから、
強張る顔に空いた手を伸ばし頬に触れると絡まる指の力が抜けるのを感じる
彼が怯えているのは私を傷付ける事か、それとも我を失う事か
揺れる瞳に映る私は案外落ち着いた顔をしている
「逃げるつもりもないよ、私」
私の言葉に彼は目の色を変えた
見つめ合うままに額が重なり、少しずつ顔が寄せられ当たる鼻先
伏し目がちな藤井くんは美しくすぐ近くで感じる呼吸に息を呑み瞼を閉じた
しかし一向に重ならない唇に離れる息遣い
目を開くと苦しげに俯く彼が痛い程に絡めた指に力を込める
「…どうしたん、」
そう声を掛けるとすぐに手首を掴まれ、彼の力が強く振り解く事はできない
片手に防寒着やお財布を持ち右手で私の手首を掴み離さない彼にどれだけ呼び掛けたって届かなくて
玄関を出てようやく離れた手に私は少しよろめいた
きっと外は寒いのだろう
寒がりな私ですらそれを感じない程に、
肩で息をし瞳を揺らす藤井くんと視線が交わり私は息を詰まらせた
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くまりんご(プロフ) - 84話の流星と大ちゃんのくだりがとても泣けました、桜さんが書く世界観がとても好きです！！これからも頑張ってください！ (2017年8月16日 23時) (
レス) id: e2ac88fff8 (このIDを非表示/違反報告)
しほ - お話読ませていただきました！今までなったことないような、なんとも言えない気持ちになり、何度も何度も読み返してしまいました。これからも応援してます！ (2017年4月30日 12時) (レス) id: 3dfa1a26ca (このIDを非表示/違反報告)
フレンズ - この作品、すごく好きです！ 更新頑張ってください！ (2017年4月20日 14時) (レス) id: 1d5f3d8302 (このIDを非表示/違反報告)
CIEL - 更新、待っていました。流星くんと大吾くんの笑顔と涙が重なって…言葉にできないけれど、頭の中に残っています。これからも、楽しみに待っています。 (2017年3月9日 23時) (レス) id: ebf57fe415 (このIDを非表示/違反報告)
のんぴー(プロフ) - 桜さん、のんぴーです。受験が終わり久しぶりに読ませていただきました。私の持っている言葉ではうまく感想が伝えられません。これからも応援してます。 (2017年3月8日 23時) (レス) id: 4a04a2b822 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：桜
| 作成日時：2016年9月20日 19時
