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最後に瞼に落とされた口づけも優しく触れるだけ
音もなく離れた唇は私の涙で微かに濡れている
そんな藤井くんの頬に指先で触れてみれば彼は目を伏せて、
もう一度引き寄せられると重なる額に二人して笑っていた
彼が教師二人に乱暴に連れて行かれた時、
無抵抗に歩く藤井くんの目は悲しみと苦しみが混ざったように真っ黒だった
あの時の彼から私はどんな風に見えていただろう
キミは何を望んだ？どうしたらキミは救われた？
そう問われているかのように、彼は私を見つめたまま逸らすことはしなかった
彼を連れていく教師の一人が乱暴に頭を掴み前を向かせた事で外れた視線
その瞬間に感じたんだ
もう彼とは以前のように話せないかもしれない
目を合わせる事も、触れる事も、落ち着き を与え合う事も
いなくなったらどうしよう、家に帰って彼がいなかったらどうしよう
怖かった、苦しかった
だからこの時恋人でもないのに額を合わせて二人笑えた事も
優しく瞼に、頬に落としてくれた口づけも、
私は嬉しく、心が満たされるのを感じていた
おやすみ安藤さん
うん、おやすみなさい
そう言葉を交わした時はもう体は離れ、
私はベッドに、藤井くんは床に敷いたお布団に
今までと変わらない夜に安心して目を閉じたはずだった
朝起きても布団には規則正しい寝息を立てる彼がいて、
学校に行かなくてもちゃんと私と同じ時間に起きてくれる藤井くんは少し遅れて目を覚まし、
クッションを抱き締めながら一階に降りてはソファで頭を重たくさせていた
「藤井くん、お昼ごはん昨日の夕飯の残りでもええかな」
「ん、全然ええよ、…もう行くん」
「うん、早よ帰ってくるから一緒に夕飯の食材買いに行こうか」
「やった、ふふっ待ってます」
そう言葉を交わすと同時に聞こえるインターホン
いってらっしゃい
いってきます
この時の藤井くんはとても穏やかで
優しい笑顔で手を振ってくれて相変わらず腕の中にはクッションがあった
家を出ると大ちゃんは「おはよう」と声を掛けてくれるがすぐに私が一人で出てきたと気づき眉を下げる
「…流星、来れへんねや」
「うん、けどもう元気やで、…大丈夫」
大丈夫 それは自分に言い聞かせた言葉でもあっただろう
「そっか」と小さく呟いた大ちゃんと二人で登校した寒い十二月上旬の朝
ブレスレットはもう、何処にもない
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くまりんご(プロフ) - 84話の流星と大ちゃんのくだりがとても泣けました、桜さんが書く世界観がとても好きです！！これからも頑張ってください！ (2017年8月16日 23時) (
レス) id: e2ac88fff8 (このIDを非表示/違反報告)
しほ - お話読ませていただきました！今までなったことないような、なんとも言えない気持ちになり、何度も何度も読み返してしまいました。これからも応援してます！ (2017年4月30日 12時) (レス) id: 3dfa1a26ca (このIDを非表示/違反報告)
フレンズ - この作品、すごく好きです！ 更新頑張ってください！ (2017年4月20日 14時) (レス) id: 1d5f3d8302 (このIDを非表示/違反報告)
CIEL - 更新、待っていました。流星くんと大吾くんの笑顔と涙が重なって…言葉にできないけれど、頭の中に残っています。これからも、楽しみに待っています。 (2017年3月9日 23時) (レス) id: ebf57fe415 (このIDを非表示/違反報告)
のんぴー(プロフ) - 桜さん、のんぴーです。受験が終わり久しぶりに読ませていただきました。私の持っている言葉ではうまく感想が伝えられません。これからも応援してます。 (2017年3月8日 23時) (レス) id: 4a04a2b822 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：桜
| 作成日時：2016年9月20日 19時
