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あれから藤井くんが教室に戻ってくる事はなく、
久しぶりに大ちゃんと二人で帰る道は嬉しいはずなのに苦しくて、
もう見た目を気にする気力すらないのか大ちゃんは何度も打ち付けた事により乱れた前髪もそのままに、
ふらふらと私の隣をゆっくりと歩いている
見える額は赤く、消える事のない夏に出来た傷痕がいつもに増して痛々しい
私も彼も苦しくて、なかなか言葉は交わされなかった
そんな大ちゃんは数珠をタオルに入れ大切にお腹の前で握りしめている
「…大ちゃんそれ、持って帰ってどうするん」
「……」
「きっともう直らへんよ、でもありがとう
大ちゃん持っていたかったらそのままあげるから
大ちゃんも好きやったもんね、おばさんのブレスレット綺麗やなあっていつも褒めてくれててさ、
お母さん喜んでたんやで、大吾くんに褒められちゃったって」
そう言葉を交わせたのは私の家の前
自分でも驚くほどに揺れない声だった
何も言わずに自分の帰路を外れて私を送ってくれる大ちゃんの優しさはこういう時も変わらない
体を向けあっても彼は俯いていて、
それでも私の言葉を、声を聞くと顔をあげ潤む瞳を揺らした
「…A、」と私の名を呼ぶ、それはとても優しい声
目の前が歪み出す私を見つめたまま大ちゃんは言葉を紡ぎ出す
「川辺を散歩するとな、数珠がキラキラ光るねん
川と同じ様に透明なのも白いのもピンク色のもみんなキラキラ〜って
俺はこの中で青が一番綺麗やと思うねんけどおばさんは白が好きなんやって
太陽にかざして 綺麗やね って笑うん、Aそっくりやったな」
大切に握り締めているタオルの先と先を結び数珠が溢れないようにそっとスクールバッグの中に入れた大ちゃん
彼がそれをどうするのかは結局最後まで答えてはくれなくて、
代わりに伸びてきた彼の冷たい手は私に触れ、
親指の腹で頬を撫で優しく笑みを浮かべる
「…あの場でよう泣かへんかったな思うたけど泣けへんかったんやな」
「…っ」
「俺がなんとかするから、Aは流星のそばに居ってやってな
大丈夫やって、早退したんやから部屋開けたらおるはずや
けどきっと落ち込んでるやろうからそばにおるだけでええの
流星を一人にするなよ、」
「俺はお前の事も一人にしたくないねん」と、
最後の声が小さかったのは大ちゃんらしいな なんて
藤井くんと比べては小さな腕の中
彼に負けない 落ち着き に私はまた涙を流した
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くまりんご(プロフ) - 84話の流星と大ちゃんのくだりがとても泣けました、桜さんが書く世界観がとても好きです！！これからも頑張ってください！ (2017年8月16日 23時) (
レス) id: e2ac88fff8 (このIDを非表示/違反報告)
しほ - お話読ませていただきました！今までなったことないような、なんとも言えない気持ちになり、何度も何度も読み返してしまいました。これからも応援してます！ (2017年4月30日 12時) (レス) id: 3dfa1a26ca (このIDを非表示/違反報告)
フレンズ - この作品、すごく好きです！ 更新頑張ってください！ (2017年4月20日 14時) (レス) id: 1d5f3d8302 (このIDを非表示/違反報告)
CIEL - 更新、待っていました。流星くんと大吾くんの笑顔と涙が重なって…言葉にできないけれど、頭の中に残っています。これからも、楽しみに待っています。 (2017年3月9日 23時) (レス) id: ebf57fe415 (このIDを非表示/違反報告)
のんぴー(プロフ) - 桜さん、のんぴーです。受験が終わり久しぶりに読ませていただきました。私の持っている言葉ではうまく感想が伝えられません。これからも応援してます。 (2017年3月8日 23時) (レス) id: 4a04a2b822 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：桜
| 作成日時：2016年9月20日 19時
