呱々声 《青》 第二章

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次の日、二人で登校していれば見覚えのある人が通学路の途中で待っていて、


私達に気がつけば嬉しそうに凭れていた電信柱から体を離して走ってくる


「大ちゃんおはよう」と近くまで来た彼に告げれば彼も立ち止まりながら「おはようっ！」と元気良く返してくれた







「なあ聞いてっ！俺昨日ハードル跳べたんやっ！

そんでちゃんと選抜入りも出来てな、キャプテンにも選んでもらえてんっ」







「大出世っ凄ない凄ない？」と、大ちゃんは嬉しそうに私の手を両手で掴み上下に振ってくる


あまりの勢いに笑っていると隣から「凄いやん、おめでとう」という低い声


「ありがとうっ」と私の手を離したかと思えば彼は元気の良い笑顔を藤井くんに向けた


藤井くんはその様子に優しく笑みを浮かべ再び通学路を歩き出す


彼の隣に並んだ大ちゃんは顔を覗き込むように歩きながら問い掛けた







「流星はどうやったん？」


「大丈夫やった、無事に選ばれたで」


「おおっ良かった！おめでとう」


「ふふっ二人ともほんまに凄いね、お祝いしなくっちゃ」






ええなあソレ と目を輝かせる大ちゃんとは反対に藤井くんは少し考えるように黙り込んだ


三人の真ん中を歩いている彼を見上げて名を呼ぶと「ん？」と優しく笑みを浮かべて顔を向けてくれる


「お祝いせん方がいい？」と私の小さな問い掛け


大ちゃんは驚いたのか勢い良くこちらに顔を向けて、不安げに藤井くんを見上げて言葉を待っていた







「んーなんか、今はまだお祝いする時ちゃうかなって

俺全国絶対行きたいし、その時にパァーッと出来たら嬉しいかなあ」


「たしかにな、俺も全国は行きたい

けど一つだけお願いしてもええ？」







大ちゃんの言葉に二人で右側を歩く彼へ顔を向けると、


大ちゃんは小走りで前に進み、振り返ると立ち止まって私達を指差しながら言葉を続けた


「俺まだ諦めへんからな、三人で遊園地に行くって」と、


それは夏休みに交わした約束の事


「懐かしっ」と笑う藤井くんに「忘れてたん？！」と悲しむ大ちゃん






久しぶりに三人で登校出来たことが私は嬉しく、


笑い合い、じゃれ合い、いつもより早く学校に着いた気がしていた


しかし教室に入り時計を見ればむしろいつもより遅かった登校時間


ほら、やっぱり楽しい時間はあっという間なんだって


一人心の中で感心していた朝の私


この日はとても冷え込んだ、十二月の始まりの日でした







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