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十一月下旬
あれから今まで通りの生活が戻っていた
休み時間になれば私の前の席には大ちゃんがいて、
藤井くんも相変わらず大勢の友達に囲まれている
彼の引き取り先がなかなか見つからないのには理由があった
結婚に反対されていた藤井くんの御両親は家族との縁を切るように故郷を離れていた為、
彼に親戚と呼べるような存在がおらず、
見つかった御両親の兄弟がいても、彼等はなかなかその話に首を縦に振ってはくれないのだ
そんな藤井くんから部活を見にきて欲しいと誘われた
驚きはしたがその日は冬季大会へ向けた選抜決めがあるらしく
「一発で決めたるから一緒に帰ろう」と
首を傾げる私に掛けられたのは何とも彼らしい言葉だった
「放課後やから教室におっても寒いと思うたんやけど、やっぱり道場も寒いんで学ラン貸します」
廊下で待っていれば剣道着に着替えた藤井くんが走ってきて差し出される大きな黒いモノ
またその行動に驚いていれば彼は何も言う事なく背中に腕を回し肩から ぶかぶかの学ラン を掛けてくれて、
私と同じ洗剤を使っているというのに鼻を掠める 藤井くんの香り に落ち着き、私はホッと息を漏らした
「あったかい？」
「うんとっても
珍しいね、いつも着てへんのに」
「あたためておきました…って言うたらさすがに気持ち悪いな」
そう言って藤井くんは笑い、私の腕を引き道場へ入ると一番奥の端っこへ導いてくれる
「ありがとう」と告げれば笑顔のまま頷き、
「いってきます」と彼は足早に部活へ戻って行った
甘ったるくない爽やかな藤井くんの落ち着く香りに包み込まれながら、迫力のある稽古を見学
選抜決めとなる試合が始まると空気が張り詰め、私も無意識に背筋を伸ばしていた
そして名前を呼ばれ竹刀を握った藤井くん
面を被っていても彼は彼であるとわかる佇まいに思わず息を呑み、
圧倒的な彼の実力に瞬きをするのも忘れていた
相手が振り下ろした竹刀を払い、その一瞬に胴を打ち響く音
全部の旗が一斉に上がる音が聞こえ、
宣言通り彼はとてつもない早さで一本を取ってみせた
静かな道場でも感じる興奮に胸が躍り、
旗が上がった瞬間 選抜の一人に藤井くんが選ばれる事はこの場にいる誰もが確信した事だろう
それでも面を外し汗を拭いながら前髪を乱す姿は色っぽく、
あれだけの早さで一本を取っても気取らない姿に彼の人柄を感じた
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くまりんご(プロフ) - 84話の流星と大ちゃんのくだりがとても泣けました、桜さんが書く世界観がとても好きです！！これからも頑張ってください！ (2017年8月16日 23時) (
レス) id: e2ac88fff8 (このIDを非表示/違反報告)
しほ - お話読ませていただきました！今までなったことないような、なんとも言えない気持ちになり、何度も何度も読み返してしまいました。これからも応援してます！ (2017年4月30日 12時) (レス) id: 3dfa1a26ca (このIDを非表示/違反報告)
フレンズ - この作品、すごく好きです！ 更新頑張ってください！ (2017年4月20日 14時) (レス) id: 1d5f3d8302 (このIDを非表示/違反報告)
CIEL - 更新、待っていました。流星くんと大吾くんの笑顔と涙が重なって…言葉にできないけれど、頭の中に残っています。これからも、楽しみに待っています。 (2017年3月9日 23時) (レス) id: ebf57fe415 (このIDを非表示/違反報告)
のんぴー(プロフ) - 桜さん、のんぴーです。受験が終わり久しぶりに読ませていただきました。私の持っている言葉ではうまく感想が伝えられません。これからも応援してます。 (2017年3月8日 23時) (レス) id: 4a04a2b822 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：桜
| 作成日時：2016年9月20日 19時
