▽11 ページ11
.
簡単に抱き着き手を繋ぐ照史くんといい、
特に気にすることなく手を重ねる流星くんといい、
ここの村の人は距離感というものをあまり知らないらしい
東京を離れて二日目
家の一階でカフェを経営するおばさんのお手伝いをした
洗い物をしたり、料理を運んだり、
その間も村の人々は私にたくさん質問してきた
自分の部屋へと繋がる階段に座りながら流星くんがその様子をじっと見つめてくるから、
初めて会った時に言われたように、私は素っ気ない態度をしないように出来るだけにこやかに答えていた
階段にいる彼はそんな私を頬杖つきながらニヤニヤと眺め、キリッと睨めばいたずらっ子に舌を見せる
お昼休憩にはおばさんのお話が止まらず、店仕舞いをした夜には一人で外に行ってはダメだと釘を刺され、
彼に伝えた通り、その日はあの平地へ足を運ぶ事は出来なかった
三日目
今日は自由にしていいよと言ってもらえてお昼前には家を飛び出し向日葵畑を駆け抜けていた
彼がいるかはわからない
ずっといると言ってはいたものの朝早くからいる保証もなければ、彼にも一日や二日、予定はあるはず
それでもどうか、どうかいますようにと願っている自分がいて、逢いたいと思っている自分がいた
たった一日、それでも私は思った
彼といれば変われるかもしれない
東京を離れたかった理由
話したくなかった、心が綺麗な照史くんには、
黒く歪んだ私の心には触れて欲しくはなかったのだろう
その綺麗な目を守りたい、綺麗な心を守りたいと思った
たった一日
抱いた違和感は何なのかは未だにわかってはいない
少年のような年上の彼に興味を持ち、ただがむしゃらに向日葵畑を駆け抜けた
「…なんで、……なんでっ」
駆け抜けた向日葵畑、抜けた先には広がる山々
一昨日、あったはずの小道が何処にもなかった
なんで、なんで、山の周辺を何度も何度も、ぐるぐる走り回ったってあの小道は何処にもない
ずっと待ってる、また一緒に遊ぼう
きっと私も嬉しかったのだ
東京では家でも学校でも孤独だった
笑い方も泣き方も忘れた、そんな悲劇のヒロインのような自分が大嫌いだった
私だって笑いたい、私だって声をあげて泣いてみたい
一昨日、出会った青年は自分の感情に正直だった
よく笑い、よく悲しむ
そんな彼なら私を変えてくれる気がしたんだ
私に感情を教えてくれる気がしたんだ
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1051人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ジャニーズWEST」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
シュマリ(プロフ) - 凄く素敵なお話でした。他の作品も見てみようと思いました。これからも頑張ってください！ (2018年1月31日 14時) (
レス) id: 761a4bf70b (このIDを非表示/違反報告)
Miwest0423(プロフ) - 読み終わり、泣いちゃいました。素敵なお話ありがとうございました。 (2017年10月10日 3時) (レス) id: 6b0e901969 (このIDを非表示/違反報告)
フレンズ - 友人に勧められて読んでみた蝉の記憶ですが、すごく面白かったです！ 素晴らしい作品に出会えました！ 違う作品も頑張って下さい！応援してます！ (2017年4月20日 17時) (レス) id: 1d5f3d8302 (このIDを非表示/違反報告)
桜(プロフ) - ちかこさん» 返信が遅れてしまい申し訳ありません、素敵なお言葉をたくさんありがとうございます、素人ながらに物語に込めた想いがちかこさんに伝わっていてとても嬉しいです、私の作品が勇気に繋がった事はとても誇らしいです…見つけてくださり、本当にありがとうございました (2017年2月2日 20時) (レス) id: 3a95ea47e4 (このIDを非表示/違反報告)
桜(プロフ) - かんなさん» 返信が遅れてしまい申し訳ありません、そう言っていただけて光栄です、蝉の記憶を見つけていただき、ご愛読いただきありがとうございました、他の作品はもっと長いものも多いので、お時間のある時に気軽に手を伸ばしていただけたらなと思います (2017年2月2日 20時) (レス) id: 3a95ea47e4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：桜
| 作成日時：2016年8月7日 1時
