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勢いよく開かれた音楽室の扉も、
誰かもわからない病院の人なのか、消防の人なのか、
警察もいたのだろうか、何のサイレンの音かもわからない
離したくなくて、離れたくなくて、
それでも引き離された霤沈菁擇歪餽海垢觧もなく担架に乗せられて、
被せられたブルーシートによって姿が見えなくなっても、するりと重力に負けて揺れる手に現実を突き付けられたようで、
片手に携帯電話を握り締める淳太先輩も、私も、
ただ呆然とその光景を眺める事しか出来なくて
気を失っていたのか、目を覚ました時には見慣れない白い天井
「Aっ!」と私の名を呼び、手を握っていてくれたのはあっくんだった
泣いたのだろう、真っ赤に染めた目と鼻、
大きな手で私の頰を包み込み病院のベッドで眠る私に彼は額を合わせた
「…あっくん、」
「淳太くんから電話きて、
…ごめん、俺まだ受け入れられてなくてさっ…」
気を失った私は淳太先輩が運んでくれたようで、
救急車も自分の車もあったはずなのに、
彼はふらふらと私をおぶりながら高校から歩いてここまで来たという
狃けてください、この子までいなくなったら俺はいよいよおかしくなる…お願いします、助けてください、助けてください
困惑する看護師さんの目をじっと見つめたまま、
まるでロボットのように繰り返していたそうだ
気を失っていただけなのに、それでも淳太先輩は怖くてたまらなかったのだと
ようやく少し落ち着いた時にあっくんに電話を掛けて彼にそう話したという
そんな淳太先輩は霤沈菁擇運ばれた安置所にいるらしく、
泣き崩れる霤沈菁擇慮羂簑欧某爾頭を下げて、その後は一人残って先輩の隣に座って離れないのだと
「少ししたら二人のところ行こう、目覚めてからすぐは身体動かしたらあかんて先生が言うとった」
「…わかった、」
それから医師の許しが出るまでベッドで安静にしていた私
その間もずっと手を握っていてくれたあっくんは特に私からは何も聞くことなく、
「最近な、とも仕事で偉い成果あげてよ、」と他愛もない話をしてくれて、
きっと私が酷い顔をしていたのだろう
なんとか笑わせようと、彼もつらいはずなのに遠くの方を見つめながら話し続けていて、
あっくんの優しさに私は目尻を熱くする
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ちま - 話を読み進める度にボロボロ泣きながら嗚咽だしながら読んでいました。たくさん、たくさん言葉にしたいんですけど言葉にならなくて。幸せに最後まで生きていけることを星を見ながら願っています。大好きです。ぜひとも映像で見たい。ありがとうございます。 (1月2日 18時) (レス) @page48 id: 1ece5748d4 (このIDを非表示/違反報告)
ふじかえる(プロフ) - いなくなってしまうお話。得意ではないので避けてきましたが、あまりにも儚くて綺麗で切なくて気づけばぼろぼろと泣きながら全て読み終えました。本当に素敵なお話をありがとうございます。きっとまた戻ってきます。 (10月19日 2時) (レス) @page48 id: 6709ad7050 (このIDを非表示/違反報告)
yuno6955(プロフ) - こうやって占ツクのお話に感想を書くのは初めてです。本当に、涙が止まりませんでした。私は本を読むのがあまり好きではありません。どうせこんなのあるわけない、ただのフィクションだと思っているから。でも確実にこのお話の中に私は生きていました。本当にありがとう (10月5日 12時) (レス) @page48 id: 52a4e3e1ad (このIDを非表示/違反報告)
あや - 続き)私は、Mixed JuiceのLIVEに行った時、色のない目をしている濱ちゃんを見た気がします。それはたまたまそう見えたのかはわからないですが、この作品を思い出しました。存在するけど、いついなくなってしまうかわからない彼を見るといつも胸が苦しくなります。 (2022年8月15日 20時) (レス) id: f8bf0b205c (このIDを非表示/違反報告)
あや - この作品を読むのはこれで4回目になります。定期的に、このお話を読みたくなります。そして、毎回同じところで大号泣。読み終わった後は、苦しくなります。自分にもこんな大切に思える人がいたらいいなと毎回思います。続きへ (2022年8月15日 20時) (レス) id: f8bf0b205c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜 | 作成日時:2016年7月15日 21時