春紫苑 《紫》第二章

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家の前まで辿り着き「ありがとうございました」と頭を下げ、淳太先輩は運転席から何も言わずに手をひらっとさせた


玄関に入ると一気に力が抜けて崩れるようにその場に座り込んだ






真っ暗の室内


どれだけの間そこにいただろう


震えた携帯にハッとして、ようやく動く事が出来た時にはもう夜中の3時を過ぎていた


ロック画面に提示されていたのは大毅くんからのメッセージ









『起きてる？』








たったそれだけ


たったそれだけなのに目尻が熱くなり、溢れ出した涙は止まる事を知らない


私以外に誰もいないこの空間で、私は一人声をあげて泣いていた


何も知らない大毅くん


今声を聞いてしまったら私は罪悪感で埋め尽くされ、


それでも残る�霤沈菁擇箸竜廚靴屬蠅離�スに、


首が絞まるほどに苦しむだろう









『さすがにもう寝てるかな、同窓会どうやった？

明後日までの予定やったけど明日には大阪帰れる事になりました、やから明日にでも話聞かせてください

照史くんはきっと楽しみすぎて今頃ベロベロなんやろな、じゃあまた明日、おやすみ』









苦しくて、悲しくて、それなのに彼が愛おしくて、


メッセージが表示されたままの携帯を抱き締めた


強く、画面が割れてしまうのではないかと思うほど強く


愛おしいその名を呼んだ






大毅くん、ごめんね大毅くん、ごめんなさい





涙ってこんなに流れるものなんだなと、


他人事のように思ったりもしながら拭いきれない事に諦めて、床にポタポタと涙を落としていた







リビングにふらふらと入り込み、飾られた一眼レフが目に入る


その時渡されたモノを思い出し、ロック画面に表示される大毅くんからのメッセージを開く事なく、


私は手帳に挟んだクシャクシャの紙を取り出して、


間違えないように、慎重に番号を打ち込んだ


4コール目、少し間をおいて「はい」という声が聞こえる









�犧埜紊傍△蠅燭い辰討機◆艇陲舛磴鵑隆蠅ぁ↓�









初めて聞く電話越しの�霤沈菁擇寮爾法�


ようやく止まった涙はもう一度頰を伝った


抱き締められて気づいた“血の気が引くほど痩せた身体”と淳太先輩のその言葉


聞かなかった事になんて出来なかった








「…先輩？」







くははっ と、懐かしい笑い声が電話越しに聞こえた


さっきは聞く事のできなかった、その笑い声


それは苦しいほど綺麗でした









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