色 々 顔 《赤》

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「うっわこんな雨降ってたんっ！お客さん傘持ってきてます？

そっかそっか！なら良かったです！気ぃつけてお帰りくださいね

はいっありがとうございます！またお待ちしておりますっ！」







居酒屋から出てきたのは３人のサラリーマンと、ふわふわな黒髪の店員さん


お客様を見送って深く頭を下げる、その人は照史くんだ


頭を上げてふーっと息を吐いた照史くんは、


お店に戻るよう足を一歩踏み出してそこで固まる


ゆっくり私の方を向き、驚いて言葉も出ない様子で目を見開く







「…えっ、Aちゃん？」


「…ごめっ、」


「Aちゃんやんなっ！

おい大毅ッ！タオル持ってこい大毅ッ！！」







賑やかな店内から「はいっ！」と返事が聞こえた


バタバタと音を立てて「どうしたんすかっ！」と慌ててタオルを持って出てきた重岡くんは、


照史くんに開いた傘を押し付けられ、よろめきながら外に出る


私の姿を捉えた重岡くんは店員の姿


照史くんと同じように目を見開いて声を震わせた









「せんせっ…成瀬先生ッ！！」








ああ、初めてしっかり「先生」と呼んでくれたね


なんでかな、惨めな姿で涙が止まらないのに、


そんな事を思ったら、自然と笑みが溢れていた








「何がおかしいねん…

せんせ？とりあえず事務所行きましょか、風邪引いてまう、…立てますか？」








重岡くんに支えられて居酒屋さんの奥にある事務所まで向かった


大きなタオルを頭から掛けてくれて、私を見えないように、守るように、肩を抱いて歩いてくれた


事務所は畳で温かみのある、落ち着く空間だった


重岡くんは荷物置き場に駆け寄り、何かを手に取り私の元に戻ってくる








「これ、俺汗っかきやから替えの服結構持ってきてるねん、…気にせんと着替えてください、

それとエアコン暖房でつけたから、暑くなったら勝手に下げてくださいね、ここにリモコン置いときます

あっ座布団も置いときますねっ！

寝ててもええから、ちゃんと着替えてくださいね

…じゃあ俺、あと30分くらいで終わるんで、

あの、ここにおってくださいね、…いってきます」








シトシトと聞こえる雨音


重岡くんの元気良い接客の声を聞きながら、


素直に受け取った服に着替え、彼の香りに包まれる


三角座りをして顔を埋めれば、さらにその香りが鼻を掠めるから、


ホッとして、また涙が溢れていた






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