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重岡くんが私を抱きしめる腕を離した


彼の方へ向いた瞬間、私に背を向けて激しく咳き込み始めた


背中をさする事しか私には出来ない


落ち着いて息切れする重岡くんの背中を、もう咳き込んでいなくてもずっと、ずっと


前のめりに俯いてた重岡くん、少し私を見上げるように顔を上げた


ベッドを強く握りしめていた重岡くんの手が私に触れる


熱く、細長い指に意識は全て持って行かれた







「…あの日は照史くんが隣におってくれました」


「えっ?」


「熱もすぐ下がって、二日後には学校にも行けた」


「…何の話?」


「雨の日の捨て犬の話」







頰に冷たい空気が刺さる


代わりにあの酔い潰れた日と同じ、彼は私の耳を摘まんだ


酒が回るように頭の中はクラクラして、カラダの力は一瞬で抜ける


重岡くんの肩を掴めば、力のない重岡くんとそのまま倒れ込んでしまう







「…そんな目で見ないで」


「俺さ、せんせーの事ずっと覚えてたんです」


「…どういうこと?」


「ふふっ耳真っ赤」


「重岡くんがっ…」


「…俺が、なに?」






熱で熱くなった細長い指が耳からすーっと首筋をなぞる


体を離そうにも、固まって動けない


私を下から見上げる重岡くん、熱のせいで小さくなるその声は低く鼓膜が音を立てて揺れるようだった







「…何もしませんよ、せんせー傷つけたくないんで」






そう言うと触れていた指を首に回して、体を起こしてもう一度私を抱き寄せた


「今日も一緒に寝てくれませんか」と力なく言う重岡くんの声は悲しげだった


私が頷けば熱いカラダを離して、優しく笑う


重岡くんの視線を移した場所に目をやれば、あの日借りたスウェットが置いてあった








「せんせーにあげんねんって決めてました」


「ははっ、くれるの?」


「…せんせーは傷付くねん、誰よりも苦しむ、

人の幸せにせんせーは悲しむんや、俺にはわかります」








「何度でも言います、だからその時は来てください」と重岡くんは照史くんが作ったお粥を手に取り、小さく掬って食べ始めた


その言葉には何も返すことはできなかった


逃げるように「お風呂借りるね」と言って、そのスウェットを手にとりピカピカで真っ白なお風呂場へ向かう






悲しげな重岡くんの声は、私の知らない声だった


私に救いの手を差し伸べてくれる重岡くんは、


言葉なく私に救いの手を求めてた


一人にしないでと、“心の中”で求めてた






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設定タグ:重岡大毅 , 高校 , ジャニーズWEST   
作品ジャンル:恋愛
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- ヤバイっすね。これ読んでるとなんか、不思議な世界に行ってる感じがするんスよ。めちゃくちゃ好きです。桜さん!頑張って下さい! (2017年6月12日 0時) (レス) id: df4bec14b1 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - まゆさん» コメントありがとうございます!嬉しいです、嬉しいです!どんどん堕ちていけるよう、私も頑張ります!第2章は少し複雑なので読みにくいかもしれませんが、後半はキュンキュンモードに入るので、ぜひそちらの方も読み進めていただけたらなと思います! (2016年5月26日 10時) (レス) id: 3a95ea47e4 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - たまたま見つけましたが、彼の甘い罠に私も完全に堕ちました…続きが読みたくて仕方ない程ハマっています。綺麗な笑顔の裏に隠された彼の闇がまた良い…! (2016年5月25日 17時) (レス) id: 24f53807b9 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - はなさん» コメントありがとうございます。前作を書いてる時にどんどんストーリが浮かんできて、今書いててすごく楽しいです!お言葉嬉しいです、どんどん惑わされちゃってください!(笑)励みになります、頑張りますね! (2016年5月20日 22時) (レス) id: 3a95ea47e4 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - aoiさん» コメントありがとうございます。一番ですか!嬉しすぎますありがとうございます!感激です、とても励みになります!ありがとうございます、頑張りますね! (2016年5月20日 22時) (レス) id: 3a95ea47e4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2016年5月12日 22時

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