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汗を拭ってあげようとタオルを手に取り重岡くんに触れた


私の手が冷たかったのか、微かに体を揺らして目をゆっくりと開く


潤む目と合った時、彼は安心したのか荒かった呼吸も少しずつ穏やかになっていく







「重岡くん、照史くんがお粥作ってくれたよ。

少しでも良いから食べない?」


「…ここ、座って、」


「え?」


「…お願い」







重岡くんがぽんぽんと弱々しく叩いたベッドにそっと腰掛けた


彼の方へ体を向けようとすると、またすぐに寝返りを打って私の腰まわりに猫のようにうずくまる


左腰近くに横顔があり、両手を強く握りしめ額に当てていた


熱で赤く染まる重岡くんの頰にそっと触れれば、また安心したように手の力を弱めた








「一人で苦しかったよね」


「や…大丈夫、ですよ」


「私には言うだけ言って嘘つかないでよ。

苦しい時は苦しいってさ、…ねえ、重岡くん、

強がらなくていいんだよ」








黙り込んだ重岡くんがゆっくりと起き上がった


私の肩を掴んで、ぐっとそのまま引き寄せる


重岡くんの左腕は私の右肩まで回り、右腕はそっとお腹に回ってぐったりと彼は私の首筋に顔を埋める


熱が全身に伝わり、シーツが冷たく感じた








「…怖かったです、こんな熱、初めてやから、」


「…うん」


「ずっとこのままやったらって、熱全然下がらへんし、…治し方、わからへんから、」


「え…?」


「おかしいやろ…風邪の治し方も、熱の下げ方も、

俺何したらええんかわからなくて…」









小さな、小さな、弱々しい声


照史くんには迷惑かけたくないからと、どれだけ一人が怖くても彼は何も言わなかった


本当は誰かにそばにいて欲しかったのに、一人になりたくなかったのに




怖くて彼は何度も壁を引っ掻いた


痛々しい爪痕には微かに血が滲む




背後から私を抱きしめる重岡くんの腕にそっと手を置いた


彼は力こそないものの、さらに私を抱き締める







「…強がらなくてええ言うたん、せんせーですから」


「うん、いいよ。

…このままでいいよ、重岡くん」


「…一人になりたないッ」


「…うん、一人にしないよ。

重岡くんの洋服、また借りてもいい?」








重岡くんが泣いた


初めて私の前で、重岡くんが泣いた


勉強はできるのに、風邪の治し方もわからない





牴兇麓里童い汎韻犬笋佑鵑騰




肺に酸素が送られていても、私はそれをうまく呼吸として使えなかった







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設定タグ:重岡大毅 , 高校 , ジャニーズWEST   
作品ジャンル:恋愛
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- ヤバイっすね。これ読んでるとなんか、不思議な世界に行ってる感じがするんスよ。めちゃくちゃ好きです。桜さん!頑張って下さい! (2017年6月12日 0時) (レス) id: df4bec14b1 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - まゆさん» コメントありがとうございます!嬉しいです、嬉しいです!どんどん堕ちていけるよう、私も頑張ります!第2章は少し複雑なので読みにくいかもしれませんが、後半はキュンキュンモードに入るので、ぜひそちらの方も読み進めていただけたらなと思います! (2016年5月26日 10時) (レス) id: 3a95ea47e4 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - たまたま見つけましたが、彼の甘い罠に私も完全に堕ちました…続きが読みたくて仕方ない程ハマっています。綺麗な笑顔の裏に隠された彼の闇がまた良い…! (2016年5月25日 17時) (レス) id: 24f53807b9 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - はなさん» コメントありがとうございます。前作を書いてる時にどんどんストーリが浮かんできて、今書いててすごく楽しいです!お言葉嬉しいです、どんどん惑わされちゃってください!(笑)励みになります、頑張りますね! (2016年5月20日 22時) (レス) id: 3a95ea47e4 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - aoiさん» コメントありがとうございます。一番ですか!嬉しすぎますありがとうございます!感激です、とても励みになります!ありがとうございます、頑張りますね! (2016年5月20日 22時) (レス) id: 3a95ea47e4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2016年5月12日 22時

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