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重岡くんは手を繋いだまま器用に鍵を開け、中へ入る
今ではもう見慣れた物の少ないこの部屋
ゆっくりと手は離され、重岡くんは私を置いて進む
窓の傍に置いてあるキャンドルを一つ手に取り、
私の方へ振り返りふわっと笑った
何も言わずに手に取ったキャンドルを机の真ん中にトンと置き、マッチを擦ってそれを焚く
ベッドに凭れるように座った彼の隣に座ると、またすぐに指を絡められる
二人でキャンドルの灯を眺め、時間だけが過ぎた
「…ずっとこのままでおりたい」
「…うん」
「…せんせ、寂しい?」
「寂しかった、悲しかった、
霤沈菁擇諭教育実習が終わった後もサークルには戻ってこなかったの…ずっとそれが不思議だった、
…実習中に決めたんだって、大学卒業して教師になれた時にプロポーズしようって、
その時までに指輪を買えるように、勉強しながら夜寝る間も惜しんでアルバイトしてたんだって、
…凄いよねぇ、本当に、…本当に、彼女さんの事を愛してるんだなって、苦しいくらいに思い知らされちゃったなッ…」
うん、うん、そう相槌を打ちながら手に力を込めてくれる
私の顔は見ないようにしてくれてるのは、きっと重岡くんの優しさなのだろう
堪らずキャンドルを眺める重岡くんの首元に顔を埋めた
「ごめん」と伝えれば何も言わずに首を振る
私の頭に顎を置いて、繋がれていない方の手で頭をそっと撫でてくれる
「言うた通り、俺が忘れさせてあげます」
「…私重岡くんを傷付けたくない」
「傷付くのは慣れてますよ」
そう言って私の頭を優しく掴み、体を離す
目と目が合えば優しく微笑んだ重岡くんがいた
両手で私の頰を包み込み、流れる涙を拭ってくれる
「そんな残酷な事ッ…」
「せんせーが悲しんでるとな、俺も悲しいねん」
「だからって…」
「俺せんせーが好き
…好きやからさ、全然苦しくないで」
「な?」と首を傾げる重岡くんの笑顔は優しく、
「せんせ、」と甘く呼ぶその声は耳の奥深くまで響き、頭の中が熱くなるような
「…俺が癒してあげる」
ゆっくりと近づくその顔を背ける事も出来ない
その甘い声に酔い、惹きつけられる目の奥に堕ちた
微かに開く唇は甘く、甘く、ついばむように重なる
ゆっくり、ちゅっと音を鳴らして離す重岡くん
俯く私の首筋に触れ、重岡くんは自ら顔を寄せてもう一度甘く口づけを落とした
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亀 - ヤバイっすね。これ読んでるとなんか、不思議な世界に行ってる感じがするんスよ。めちゃくちゃ好きです。桜さん!頑張って下さい! (2017年6月12日 0時) (レス) id: df4bec14b1 (このIDを非表示/違反報告)
桜(プロフ) - まゆさん» コメントありがとうございます!嬉しいです、嬉しいです!どんどん堕ちていけるよう、私も頑張ります!第2章は少し複雑なので読みにくいかもしれませんが、後半はキュンキュンモードに入るので、ぜひそちらの方も読み進めていただけたらなと思います! (2016年5月26日 10時) (レス) id: 3a95ea47e4 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - たまたま見つけましたが、彼の甘い罠に私も完全に堕ちました…続きが読みたくて仕方ない程ハマっています。綺麗な笑顔の裏に隠された彼の闇がまた良い…! (2016年5月25日 17時) (レス) id: 24f53807b9 (このIDを非表示/違反報告)
桜(プロフ) - はなさん» コメントありがとうございます。前作を書いてる時にどんどんストーリが浮かんできて、今書いててすごく楽しいです!お言葉嬉しいです、どんどん惑わされちゃってください!(笑)励みになります、頑張りますね! (2016年5月20日 22時) (レス) id: 3a95ea47e4 (このIDを非表示/違反報告)
桜(プロフ) - aoiさん» コメントありがとうございます。一番ですか!嬉しすぎますありがとうございます!感激です、とても励みになります!ありがとうございます、頑張りますね! (2016年5月20日 22時) (レス) id: 3a95ea47e4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜 | 作成日時:2016年5月12日 22時