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カタンっと玄関から軽い物がポストに落ちる音の少しあとに、バイクが走り去っていく音が耳に届き慌ててリビングのドアを開けたのは、数日前の出来事だ。
届いた郵便物は受験した大学からの合否で、中を開くと「合格」の二文字があった。
学校、塾にもすでに伝えており、今は別の所へ急いで向かっていた。
" __日 16時 __公園に集合 "
今手に握られているメモには、なるせの文字でそう書かれていた。
現在の時刻は16時09分を示しており、約束の時間を過ぎていた。
いつぶりにこんなに走っただろう。乱れる呼吸なんて気にする余裕はなく、ただただ急いでなるせが待っている公園へと急いだ。
「ごめっ、はあ、はあ、遅れた、」
人気のない公園にはすでに彼の姿があり、すぐに謝罪をした。
「16時10分。Aでも遅刻するんだね、忘れられてるのかと思った」
ケラケラ笑いながら「全然大丈夫だよ」と言いこちらに歩いてくる彼に、ほっと胸を撫で下ろす。
肩で息をしていると「だいじょぶかー?」と屈みながら顔を覗き込まれ、彼の目を自分の手で覆った。
「はあ、あんまりジロジロ見ないで、恥ずかしい」
「はいはい」
*
「落ち着いた?」
「落ち着いた」
「じゃあ、話してもいい?」
「うん」
呼吸が整うまで待ってくれたなるせは、私の様子を見計らって声をかけてくれた。
これから彼の言っていた「話したいこと」を話されると思うと、落ち着いた心臓がまた激しく脈打ち始めた。
二人の間に沈黙が訪れ、腕時計から聞こえる時を刻む音が、さらにその沈黙を長く感じさせた。
彼の緊張感が私にも伝わり、自然と背筋が伸びてしまう。なるせは深呼吸するとこちらを向き、その綺麗な瞳で私を捉えた。
「好きです、付き合ってください」
少し震え混じりの彼の声は、しっかりと私の耳に届いた。嬉しくて、幸せで、心が彼で満たされているようだ。
「私も、なるせが好きです」
" これからも、よろしくお願いします "
そう言おうとする前に彼の腕の中に包み込まれ、驚きのあまり声が出なかった。なるせからドクドクと心臓が脈打つ音が聞こえ、彼も同じ気持ちなのだと思うと、自分の心臓も鳴り止まなかった。
「よかった、伝えられてよかった、おれ、今めっちゃ幸せ」
涙声で話す彼に「私も」と伝え抱きしめ返した。
「これからもよろしくね。大好き」
fin.
拝啓、13歳/センラ 天月 伊東歌詞太郎 By.こんぺいとう。 →←***
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ゆら - わー!私、丁度受験終わったところなんです(´TωT`) (2021年5月3日 12時) (レス) id: 178b398402 (このIDを非表示/違反報告)
あーやんの向日葵畑(プロフ) - こちらもすべて見ました、個人的にaftertheRainが好きでとても素敵なお話がたくさんありました!どの作者様の思いが込められていて幸せな気持ちになりました、神企画の名にふさわしいものですね(*´艸`*素敵な作品をありがとうございました! (2020年3月15日 21時) (レス) id: 6889ca0c35 (このIDを非表示/違反報告)
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