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坂田の一言に、私の瞼が瞬いた。
涙がつうっ、と頬を伝い、顎先から落ちていく。
「遅くて、ごめん。……もっと早かったら、Aはもっと悩まんで済んだかもしれへんのに」
また「ごめん」と呟いて、坂田は私の目元を親指で拭った。
その擽ったさよりも、彼から放たれた言葉の真意が掴めなくて、私は口から掠れた声を漏らす。
「……どういう、こと……？」
「えぇ？」
はは、と笑ってみせた坂田に、つまりはそういうことなのだと、私は一気に思考を繋げ。
再び瞳が瞬いた瞬間、今までとは比べ物にならない程の涙が溢れて流れ始めた。
「わ、ちょ、なんで！？」
「っ、うるさい、ばかっ！」
「はぁ！？ 何や馬鹿って！」
嗚咽混じりの私。
目の前で慌てたり怒ったり、忙しそうな坂田。
いつも通り騒がしい私たちは、誰もいない教室でぎゃあぎゃあと言い争う。
だんだん不機嫌になり、頬を膨らまし始める坂田から、私はわざとらしく視線を逸らす。
それにまたムッとした様子の坂田は「大体！」と少し大きめの声をあげた。
空気が揺れて、私は反論ばかりの口を閉ざす。
「なーんで俺と離れたくないからって夢諦めるとか言うねん！ 俺ずーっと応援してたのに！」
「だ、だって……」
「だって、じゃない！ ほら！」
「わっ……！？」
ばん、と背中を叩かれ、前につんのめる。
何とかその場に留まると、坂田は焦れったそうに私を見ていた。
いつの間にか、窓際にいたはずの私の身体は坂田よりも教室の出入り口に近くなっている。
「行ってき、先生のとこ。志望校変更やめますって」
「はっ！？」
「俺、将来Aにやって欲しいことあんねんで！ Aには夢叶えて貰わな困るの！」
にかっと快活さ溢れる笑顔は、紛れもない私が好きになった笑顔。
気付けば、溢れる涙は止まっていた。
「なに、それ」
「へへっ、秘密。 夢叶えたらのお楽しみ……やけど、約束な」
「内容も知らないのに約束しろって言うの？」
「ええから！ ほら、早く先生のとこ！」
少しの諦めと共に、苦笑いしながら身を翻せば、視界の端で坂田があの笑顔で笑っていた。
背中が熱い。
ジンジンと熱が走っている。
ーー彼が隣にいなくなるのは、もちろん嫌だ。
それでも、彼は背中を押してくれたから。
こんな私に、期待してくれたから。
私の将来に、約束を交わしてくれたから。
最後、小さな笑みを残して。
私は大股で教室を飛び出した。
それは、とある秋の日のことだった。
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ゆら - わー！私、丁度受験終わったところなんです(´TωT｀) (2021年5月3日 12時) (
レス) id: 178b398402 (このIDを非表示/違反報告)
あーやんの向日葵畑(プロフ) - こちらもすべて見ました、個人的にaftertheRainが好きでとても素敵なお話がたくさんありました！どの作者様の思いが込められていて幸せな気持ちになりました、神企画の名にふさわしいものですね(*´艸｀*素敵な作品をありがとうございました！ (2020年3月15日 21時) (レス) id: 6889ca0c35 (このIDを非表示/違反報告)
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