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「なー、A」
どうやら物思いにふけっていたらしく、坂田が私を呼ぶ声にハッと我に返った。
慌てて「何？」と答えるーーが。
俯き気味な坂田からは、一向に返事が返って来ない。
「坂田？」
「え……あぁ、うん……」
なんだろう、様子がおかしい。
視線が泳いでいるし、言葉もしどろもどろだ。
私が感傷に浸っている間に、一体何があったのだろうか。
きょと、と首を傾げて彼を見つめていると、やがて。
「……あの、さ」
数分越しに続きが紡がれて、私は彼の言葉に耳を傾ける。
けれど、やはり先を見失ったかのように続かない言葉。
やけに言いづらそうな坂田に、疑問の念しか湧かない。
どうしたのーー。
そう問おうとした瞬間、バッと顔が上がり、目の前で揺れたふわふわの髪。
オレンジ色の光を浴びたそれのかかった彼の顔は、決意の表情に満ちていた。
「A、さ」
「……私？ うん、何？」
何かに決意を固めた彼が、すぅと息を吸う音。
硬式ボールがバットに当たる音。
吹奏楽部の、華やかなフィナーレの音。
いろんな音色が、やけに大きく聞こえて。
「第一志望の大学、変えた？」
ーー刹那、それは「無」と化した。
「え……」
咄嗟に口から零れた声が、自分でも驚く程に掠れていて。
それを聞いた坂田が、顔を顰める。
私が本当に、志望校を変えたのだと。
手に入れた情報が「事実」なのだと。
そう、確信したのだろう。
「なんで……？ なんで、なん……？」
あまりにも悲痛そうな声に、私の胸がキリキリと締め付けられる。
「なんで」なんて、こっちの台詞だ。
なんでそれを知ってるの。
なんでそんなに辛そうなの。
ーーなんで、貴方が泣きそうなの。
どばどばと溢れ出す疑問と感情を、深呼吸で必死に胸中に押し留める。
何も言わない私に焦れたのか、坂田はーー
「……なぁ、なんで！？」
ーー机を両手で叩き、椅子を跳ね除けて勢いよく立ち上がった。
バンッ、と轟く衝突音に、私の肩は飛び上がる。
故意に合わせなかった視線を改めて交えれば、その大きな瞳には薄い透明なベールが揺れていた。
微かな怒りと激しい悲しみを透かすそれは、うるうると溢れそうな程に瞳の中で泳いでいる。
「夢やって言いよったやん！ ずっと！ 絶対叶えるんやって、俺にいっぱい話してくれたやん……！」
「……さか、た……」
不可解で、理解不能。
坂田が私の夢に過剰になる理由が、分からない。
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ゆら - わー！私、丁度受験終わったところなんです(´TωT｀) (2021年5月3日 12時) (
レス) id: 178b398402 (このIDを非表示/違反報告)
あーやんの向日葵畑(プロフ) - こちらもすべて見ました、個人的にaftertheRainが好きでとても素敵なお話がたくさんありました！どの作者様の思いが込められていて幸せな気持ちになりました、神企画の名にふさわしいものですね(*´艸｀*素敵な作品をありがとうございました！ (2020年3月15日 21時) (レス) id: 6889ca0c35 (このIDを非表示/違反報告)
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