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甘いローズの香りが薄くなり、カップの中の鮮やかな紅が底を尽く。2人の間に会話は無く、時折吹く風に紛れて、ティーカップとソーサーが音を響かせた。ゆっくりと穏やかに、けれども確実に時は過ぎていった。




「さて。私はもう、眠る事にするわ。付き合わせてしまって、ごめんなさいね」
「いえ。陛下の願いを聞くのも、これが最後ですから」




ヒュンッと、鋭い音が空を裂く。幾度となく彼女を守った薔薇()()が、その柔肌を傷付ける。ピタリと張り付いた首筋から滲む鮮やかな赤に、彼女は別段驚いた様子もなかった。




「……驚かれないのですか」
「ええ。だってそれが、貴方の仕事なのでしょう?」




全て知っている。そう言いたげな凪いだ瞳に、手元の力を入れなおす。


あと少し。少し腕を振るうだけで、彼女の首は、その身体にさよならを告げる。




「今までありがとう、うらたさん。貴方が側近で、私は幸せでしたわ」




ふわふわと、"いつも通り"に咲く薔薇(はな)に、切っ先が震える。




今思えば、アレは『一目惚れ』だったのかもしれない。幼い頃から全く姿を変える事の無い貴女に、どうしようもなく惹かれたのだ。気付いた時には、貴女の隣に立ちたいと想っていた。そのために剣の腕を磨き、勉学に励み、この地位(貴女の隣)を手に入れた。



それが、この瞬間。その全てがなくなる。



あの凛とした眼差しが、俺に向く事がなくなる。

あの柔らかな声が、俺の名を紡ぐ事がなくなる。

あの小さな手のひらが、俺の腕に絡まる事がなくなる。


あの髪が。あの腕が。あの脚が。あの身体が。



この世界(俺の隣)から、Aという存在がいなくなる。




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なのなの-VII(プロフ) - 以前から気になっていたのですが、時間がなく、やっと拝見させていただくことができました。私の少ない語彙力では、気持ちを全て伝えることができないことが悔しいです。なので、一言だけ。とても、素晴らしかったです。 (2019年12月9日 23時) (レス) id: 3d69e77dfd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:作者一同 | 作者ホームページ:***  
作成日時:2019年4月29日 23時

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