【うらたぬき】勝手に反抗期/ねこた ページ5
(…あ、今日もいる)
なんて、一目で分かるほどのこの車内の人の少なさにも慣れてきた頃｡今日もその人はいた。
幼い容姿を残しつつも意外とあっさり着崩された制服からは大胆な緑色のパーカーが出ていて｡地毛のように感じられるがしっかり染まった茶髪の隙間から、星形のイヤリングが垣間見れた｡上へと伸びた寝ぐせにもおしゃれにも感じられるぴょこんと伸びた髪の毛。ズボンが少し靴にかかっているのがいかにもな母親の良心を見る。ワイシャツのしわのなさ、だぼっとした大きめのパーカーのアンバランス。均衡がとれるね。
そして一番の気になりどころだった。肩に掛けたギターがこれでもかと言った高校生感を滲み出した夏を感じられる春の終わり頃｡同じ高校生だったとしても、彼は目を引く存在だった。吊革につかまってくあぁ…とかかわいいあくびをし始めちゃうのも、なんとなく私と目が一瞬の間に合ってすぐに背けるのも、その一緒のたぬきちゃんと学校に行けることも。すべて彼だけの特権な気がした。勝手に見つめてしまうのは、私の特権になるのかな。
＊
朝6:30のバスって意外と人がいない。車長さんと君と私ぐらいしかいないもんです。朝の学生っていうのは電車に揺られて登校がオーソドックスなんでしょうけど、こんな田舎に線路を作る程国は私ををきちんと見てくれはしない。結局。田舎ってそんなもんです。
今日も話しかけずに君の２個前で降りる。せめて目も合わせられない乙女の心情も察してくれぬほどにも及ばず。1回も目が合ったことも、もはや話しかけることはないのであろうとも感じ取れてしまうね。恋するフィルターは何もかも正論をかけていく｡こっちが勝手に思ってるんだけどね。君の持つギターに憧れしか感じられない。なんて、言い訳がましいね。別に、君を見ているわけじゃない｡そんなこと言ったなら、嘘になっちゃうね。ギターをかき鳴らして､弦でも壊してやりたい。肩を竦めて変哲のない顔で降りた。
君のギターを見てるだけ。
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なのなの-VII(プロフ) - 以前から気になっていたのですが、時間がなく、やっと拝見させていただくことができました。私の少ない語彙力では、気持ちを全て伝えることができないことが悔しいです。なので、一言だけ。とても、素晴らしかったです。 (2019年12月9日 23時) (
レス) id: 3d69e77dfd (このIDを非表示/違反報告)
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