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ページ35

『レイちゃん……いや、A。好きです。付き合うて下さい』

『…っ、は、はい!』


俺が彼女に想いを告げたあの日。
彼女は泣いて喜んで俺の言葉に答えてくれた。
ずっとずっと健気で、謙虚で誰よりも努力を怠ろうとしない彼女の姿に簡単に惚れ込んでしまったのだ。

他の歌い手仲間に対しての謙虚な姿勢、いつまでもいつまでもその時点での自分の実力を驕る事無く精進し続けようとしている姿勢、物事を熱心に考え悩む横顔、大切な人をいつまでも大切にしようと言う心……。
彼女の性格に、外見に、すべてに惹かれたのだ。


「センラさーん、明日って私の半年ぶりの活動じゃん?」

「うん。まぁそうやね」

「つまりは、暴走するかもしれませんが…?」

「そんなんぶちかましたれ!」


『暴走』とはAが毎回ライブで見せる姿だ。
本人曰く、暴走したら何の歯止めも効かなくなり、周りの音が一切聞こえなくなるということ。
ただ音楽として、歌として吐き出そうとしたら暴走してしまっているそうだ。
そうして、その『暴走』こそが全ての始まりを意味する。

A__すなわち歌い手レイの異名や用語は多数存在する。
歌い手レイ、別名『怪物』
それは天才を通り越して怪物並だとの評判の言葉なのだ。
そしてレイは毎回ライブで暴走した挙句『吠える』と言われる。それは感情が昂ぶった際に叫ぶのが怪物が吠えているようだ、との揶揄の言葉だ。


「ぃよっしゃあ!そんなら明日のライブ思いっきり楽しめるじゃん!?思いっ切り歌えるじゃん!」

「俺も負けんようにかましたらなあかんなぁ〜」


そう言って後ろから彼女を包み込むようにして抱き締めると、一瞬にして茹蛸のように顔が真っ赤に染め上げられる。
何度同じようなことをしても何度も何度も飽きもせずに同じように顔を赤らめる彼女に思わず笑いが込み上げて来る。


「ふっ、また顔真っ赤やん!」

「う、うるさい!黙れ!」

「可愛いなぁ〜」

「なっ、センラさんうるさい!」


いつもいつもこうして茶化しては軽口を叩かれて…なんてやり取りも愛おしくて仕方が無い。
彼女は何か照れる度に顔を赤くしてこうやって何かしらの軽口を言ってくるが、それは恥ずかしいからだと全部分かっているので逆効果というか何と言うか。

こんな彼女が自分のものであることが本当に本当に嬉しい。


「まぁ、でもとりあえず明日のライブ、上手く行くといいね」

「そんなん上手く行くに決まっとるやろ!」


明日のライブで全てが決まるのだ。
俺達の再出発点が。

*→←【センラ】始まりの歌/鎖座波



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なのなの-VII(プロフ) - 以前から気になっていたのですが、時間がなく、やっと拝見させていただくことができました。私の少ない語彙力では、気持ちを全て伝えることができないことが悔しいです。なので、一言だけ。とても、素晴らしかったです。 (2019年12月9日 23時) (レス) id: 3d69e77dfd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:作者一同 | 作者ホームページ:***  
作成日時:2019年4月29日 23時

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