【となりの坂田。】仕組んだ始まり/凪桜 ページ31
桜が咲いて、ピンク色のカーペットを胸を踊らせて歩いた入学式の日――
きっと、あの日はこんな絶望みたいな表情をしてなかっただろう。
念願の高校に入学して早一ヶ月が経つ。
ピンク色の花びらは緑色へと変わって、私の心境も変わる。
最初はあんなに楽しみだった学校。
勉強は何を言ってるのか分かんなくなったし友達も数少ないしで学校の何が楽しいのかが分かんなくなる。
学校行きたくないな、とブルーな気持ちを抱えながら通学路を辿る最中、耳に届いたのは学校生活楽しんでますよ、とでも言いたげな弾けた声。
「うらさん、課題やったー?」
「やったけど。お前は?」
「やったー!…………忘れたー!!!」
思わず笑い声が漏れる。
こんな会話をしているのは2軒隣に住んでいる赤髪の青年、坂田くんとその相棒的存在であるうらたさんだ。
彼らは私とはまた違う学校に通っていて時々こうして、すれ違う程度だ。
「っぁ」
前を歩いていた同じ制服の女の子がキーホルダーを落とす。
「あの、これ。落としましたよ」
少しだけ足を早めて告げれば女の子はきらきらした笑顔を浮かべて感謝の気持ちを伝える。
「わ! ありがとうございます! よかったぁ、これお気に入りなんです!」
そう笑う女の子。胸元のリボンは真紅に染まっていて同級生なのが分かる。
でも、この子はきっと自分よりも何十倍も人生を楽しんでいるんだろう。
「あの、もうすぐで遅刻すると思いますよ? 今日、集会なので」
「え! ほんとだ! ありがとうございます!」
最後にもう一度お礼を告げてぱたぱたと駆け出す女の子。
その姿に思わず笑みが零れて少しだけ、テンションが高揚した。
「あ、おはよーございます」
ぺこっと茶髪の男の子、うらたさんは軽くお辞儀をする。
礼儀正しいのか目が合うと会釈と共に挨拶をしてくれる。
私が通学路を無事に通れる理由にはこのうらたさんの挨拶と坂田さんの弾けた声が届くからと言っても過言ではない。
「おはようございます」
私も同じように会釈と挨拶をする。
うらたさんはふわっと可愛らしい笑顔を浮かべて坂田さんの元へ駆け出す。
こんな可愛らしい顔立ちなのに坂田さんには信頼とも取れる暴言を吐いてるんだよね。
私より10分ほど早く始業のチャイムが鳴る坂田さんとうらたさんの学校。
それはもう鳴るそうで慌てて2人は走り出して行く。
集会だと言ったけど保健室登校気味である私にはなんの関係もない。
ただこの時間帯に学校に行き保健室にいるだけだ。
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なのなの-VII(プロフ) - 以前から気になっていたのですが、時間がなく、やっと拝見させていただくことができました。私の少ない語彙力では、気持ちを全て伝えることができないことが悔しいです。なので、一言だけ。とても、素晴らしかったです。 (2019年12月9日 23時) (レス) id: 3d69e77dfd (このIDを非表示/違反報告)
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