【となりの坂田。】ソアレ/透 ページ27
暗くて冷たい部屋に、君はいた。
カーテンに遮られたそこは、俺と病院の関係者以外立ち寄らなくなった。君はただ1人で、死と隣り合わせの毎日に怯えることなくじっと耐えていた。
いつも明るい君に、俺はずっと疑問を抱いてたんだ。
「にっ、こう、びょう……?」
初めて彼女自身からその名を聞いた時は、クエスチョンマークが頭いっぱいに広がったっけ。
世界でもまだ数人しか発症が確認されていない日光病は、自然光を浴びると体内の細胞が死亡する病気らしい。
未だ薬などは開発されておらず、Aの体は検査対象にされ、暗い部屋で毎日を過ごしていた。
「坂田くんは私の太陽みたい。」
自然光を浴びては行けないAは、恋人でもなんでもない俺を見ていつもそう言った。
それは、太陽の代わりになれてるってこと?それとも________
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彼女との出会いは、俺のダサい失敗がきっかけだった。
「うらさん、入るで?」
入院した友達のお見舞いでやってきた慣れない病院。「263…263…」と部屋番号をブツブツ呟きながらコンコンとノックして病室に入った。
「体調いける?ゼリー買ってき……え」
「え、」
が、目に入ったのは、点滴が刺さった華奢な白い腕と、こちらを見て目を丸くする一人の女性。まだ昼間だと言うのに部屋は薄暗く、彼女の白い肌がよく映えた。
「間違えました!すいません!」
部屋を間違えた上に、その間違えた部屋にいたのは可愛らしい女性だったことに赤面し、慌てて部屋を飛び出した。
部屋を出て、ネームプレートを見ると書いてあった名前は「望月A」。ちげぇよ…俺が行きたかったのは「浦田わたる」の部屋だったんだよ……
ため息をひとつ吐いて、踵を返した。
.
「なぁうらさん。隣の部屋ってなんであんなに暗いん?」
「え?隣?」
すっかり顔色も良くなったうらさんは、「んー」と考える素振りを見せ、「誰も見舞いに来てるとこ見たことはないけど」と首を振った。
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なのなの-VII(プロフ) - 以前から気になっていたのですが、時間がなく、やっと拝見させていただくことができました。私の少ない語彙力では、気持ちを全て伝えることができないことが悔しいです。なので、一言だけ。とても、素晴らしかったです。 (2019年12月9日 23時) (レス) id: 3d69e77dfd (このIDを非表示/違反報告)
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