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あれからというもの俺のなかで教会通いはすっかり日課となってしまっていた。
…叔母と一緒に居たくなかっただけで決してあいつに会いたかった訳じゃない。
今日も教会へ向かおうと荷物を纏めているも叔母に「ね、渉くん」と声をかけられた。
「なに、叔母さん」
「いや渉くんにお客さんみたい。ほら、」
叔母が指す方には1人の中年の男_たしか大工をしていたはず_が何やら難しい顔をして椅子に座っていた。
「どうも、」
俺が軽く挨拶をするが男はそれを無視して口を開く。
「君、Aという女を知っているかい?」
「よく教会にお邪魔してますが…」
「それが何か」のその字も言わせずに男は口を挟む。
「悪いことは言わない。彼女と会うのはやめにしなさい」
「は?いきなり何言って」
「君のためなんだ」
男のこれでもかと言うように寄せられた眉の下の瞳が俺を睨みつける。嫌だ。
「すみません、俺行くとこあるんで」
君に会えなくなるなんて、嫌だ。
「待て!まさかあいつに会いに行くつもりじゃあないよな!」
「そのつもり…ですっ!」
俺の肩を掴む男を勢いに任せて振り切り、半ばぶつかるように扉を開け、外に飛び出した。
そして俺はただただ走る。
「…Aっ!」
たった一人の、君に会うために。
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なのなの-VII(プロフ) - 以前から気になっていたのですが、時間がなく、やっと拝見させていただくことができました。私の少ない語彙力では、気持ちを全て伝えることができないことが悔しいです。なので、一言だけ。とても、素晴らしかったです。 (2019年12月9日 23時) (レス) id: 3d69e77dfd (このIDを非表示/違反報告)
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