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それから自己紹介をしてもらった。あの赤髪の人は坂田さんっていうらしい。うん、第一印象とは変わっていい人そう。
その後、立ち話もなんだし、と部屋に招いてもらった。同じ部屋なのに、家具とかが少し違うだけでこんなにも変わるものなのか。
「でも、なんでいきなりここに引越しを?」
まぁ時期的にはあるあるだけど、と質問され、私は素直に今までの事を話す。
「へえ、ってことは上京ガール?いいね」
「でも、上京したてでこのマンション住めるって両親とか相当なお金持ちやんな?」
「え、お金持ちなんて、そんな……それとはかけ離れて凄いボロボロの所に住んでましたよ。小さい頃からずっと貯めてたお小遣い使ったんです」
「まじか、すげー!めっちゃ偉いやん」
初めてとは思えないくらい会話が弾む。すごい、楽しい。
「ところでさ、この紙袋の中身って何?」
私が持ってきたものを指さして言う。
「あっ、それは地元の名産物です!美味しいですよ!すごく!」
「へえ、楽しみやわ」
「えー志麻くんだけ狡い!俺も食べたい」
「えへへ、どうぞお二人でお食べ下さい」
二人にふふ、と笑いかける。こんな事になるならもう1つ買っておけばよかったな。
「てか、もう外暗いやん!成人してたとしてもまだ学生さんやしこんな時間まで男女一緒なのはちょっとあかんよね。そろそろお開きにしよっか」
坂田さんの声に合わせて窓を見ると、本当だ。外が暗い。そろそろ帰らなきゃ。
一つお礼を言って部屋を出ようとすると、誰かに肩をとんとんと叩かれた。振り返ると、そこには志麻さんが居て
「これから大学生なら今めっちゃ大変な時期やろ。周りに知ってる人誰も居らんと思うし。俺も数年前、全く同じやったし、困った事があればなんでも俺に言ってな?」
「っ、はい!ありがとうございます。じゃあ」
なんて、優しい人なんだろう。
胸の弾みと共に次会うのが楽しみになっていた。
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なのなの-VII(プロフ) - 以前から気になっていたのですが、時間がなく、やっと拝見させていただくことができました。私の少ない語彙力では、気持ちを全て伝えることができないことが悔しいです。なので、一言だけ。とても、素晴らしかったです。 (2019年12月9日 23時) (レス) id: 3d69e77dfd (このIDを非表示/違反報告)
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