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返事の代わりに、そっと志麻の身体に腕を回した。土砂降りの中、紫の髪から滴った雫が私の首を濡らす。
「っ、」
顎を持ち上げられ、気付けば私は志麻と唇を重ねていた。土砂降りの中、一国の王と一国の仙が木々の中にいるのは異様と言えよう。
少し時がたって私がふらふらになったとき、ようやく私は開放される。雨はまだ止みそうになくて、天気もまだ制御出来ていない自分はまだまだ新米と言うことらしい。
「ずっと、大事にしてやるから」
どれだけ官に反対されても、貴族の娘達との見合いを一方的に設けられても譲らなかった結婚。
その一言に、なにかが詰まっている気がして。仙人の空っぽのはずの心は何故か苦しかった。
「帰るか、」
城へ。
そう言って私は横抱きされる。驚いて上を見れば、雨で前髪が張り付いた志麻と目があった。相変わらずきれいな目をしていると思う。
この国の汚い面も、何もかも全てを見て、その上でこの国を愛すると決めた目。濁りが無いなんてありえない。汚い面を見なければ政治なんて出来ないのだから。
でも、その目が好きなのだ。
土砂降りに目を瞑り、そう考えた。
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なのなの-VII(プロフ) - 以前から気になっていたのですが、時間がなく、やっと拝見させていただくことができました。私の少ない語彙力では、気持ちを全て伝えることができないことが悔しいです。なので、一言だけ。とても、素晴らしかったです。 (2019年12月9日 23時) (レス) id: 3d69e77dfd (このIDを非表示/違反報告)
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