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そしてその後、私は父親に頼み込み色々な武術や交渉術その他もろもろを仕込んでもらい
晴れて、父の組織のエージェントとして働くことになった。
もっとも、進学した大学の傍らであり、そちらを疎かにしたらクビという条件付きだが。


「それで?どんなことやっとるん?」

「…まぁ、父さん志麻さんには話していいって言ってたしね。今は諜報任務が多いよ。」

「ふぅん…まぁ、さすがに新人相手に危険な任務させるほどボスも鬼やないしな。」

「私としては、いろいろ経験積みたいけどね…」

「焦ったらあかんよ。」


子供をあやすように、頭を撫でられる。嫌いではないしむしろ好きなのだが
私の中で、彼はただボスの娘としてしか見られてないのではないか。なんて不安になる。


「大丈夫、Aなら。何かあったら俺が守ったるわ。」

「へ…うん…ありがと…?」

「ほら、今日は成人祝いやしとことん飲むで!」



成人祝いに、とおごられたお酒を一気に煽り、ちらりと時計を見ればいい時間になっていた。
志麻さんは、まだ私がこの仕事についた理由が気になっているのかジーっとこちらを見ていた。
この人は、自分の見目の良さを自覚した方がいいと思う。
整えられた黒に近い紫色の髪、その紙より明るい紫の瞳と色気の塊である泣きほくろ。
さらにそれを助長させるようなスーツ姿は、どこぞのホストかと思いたくなるほどだ。
ただ、その口から放たれた言葉はホストとかけ離れたものだが。


 
「A、お前なら他にもいろいろあったやろ。いくら、親の仕事がこれやからって……」

「んーお父さんは関係ないよ。…私の、夢と野望のためかな。」

「は…?何やそれ。」

「今はまだ秘密、じゃあお酒ありがと。またね。」

「お、おぅ。またな。」



 
今はまだ、彼に釣り合わないから。
少しだけカッコつけて、唇に人差し指を当てて微笑めば諦めたように笑う彼の姿があった。
身をひるがえして、カツカツとヒールの音を立てて、最近やっと纏う空気を変えることができた。
今の私は、あの人に片想いしている私じゃない。

実力主義の、影の社会、エージェントの一員だ。


 
「…大丈夫、私ならできる。」


 
艶やかな黒のドレスに身を包んで。標的を確認して、任務を遂行する。
いつか、あなたの相棒として一緒に仕事をしたいから。
その為には、もっともっと成長していかないと。


 
「大丈夫、好きな人のためなら…志麻さんのためならなんだってできるもん。」


 
 

*→←【志麻】いつか、あなたと/Elice



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なのなの-VII(プロフ) - 以前から気になっていたのですが、時間がなく、やっと拝見させていただくことができました。私の少ない語彙力では、気持ちを全て伝えることができないことが悔しいです。なので、一言だけ。とても、素晴らしかったです。 (2019年12月9日 23時) (レス) id: 3d69e77dfd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:作者一同 | 作者ホームページ:***  
作成日時:2019年4月29日 23時

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