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水槽の中のエアーポンプがじ、と絶え間なく響く。私は先程見た美しい尾びれを思い起こしながら首を横に動かした。
「できないよ」
「……そう」
立ち上がったジンくんは、壁の時計をちらりと見遣る。
「遅いし泊まってけば？ 明日仕事休みでしょ」
「え、でも」
今この話を聞かされて、2人が住んでいた家に泊まるというのはさすがに気乗りしない。しかしジンくんは財布から数枚紙幣を取り出して私の手に握らせる。
「マンションのすぐ下にコンビニあるから。必要なものあったら買ってきて」
うちにあるものは貸せないからさ、と付け足して、指輪の光る左手を下ろした。
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一緒の時間を過ごせるのだから、ああ言われてしまえば断わる理由がななかった。でも結局あの後別々の部屋で寝て、何も起こらないまま朝になり私は荷物をまとめることとなる。
もしかしてあの子の部屋で寝させられるんじゃないかとひやりとしたが、私がジンくんの部屋で、ジンくんはリビングのソファで寝ることになった。そして寝るまでの間もほとんど会話らしい会話もなかった。
家に帰った私は、ジンくんの事がよくわからなくなってしまった。最初は2人の空間を見せつけることで私を諦めさせようとしたのかと思ったが、わざわざ家に呼ぶだろうか。だってあんなに大切そうに思い出全てを閉じ込めていたのに。誰かが入るのは嫌なはずだ。
そんな真似をされなくても、レストランできっぱり断られていれば、私も諦めていた。というより、そもそもまともに取り合ってもらえるとすら思っていなかったのである。自分のけじめのための告白でもあったのだから。
やっぱり分からない。ジンくんはどうして私を家に呼んだのだろう。
でもそれを聞けるほどの勇気もなかった。せっかく訪れた機会を、余計なことをして逃がしたくなかったから。
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せぼね(プロフ) - ?さん» 遅くなってしまいすみません。負け犬の胎動とはがらっと変わった雰囲気だった上に、彼をメインで書く作品は今まであまりなかったのでそう思っていただけて嬉しいです。次のお話も楽しんでいただけるものになればと思っています。 (2021年10月7日 11時) (
レス) id: 315a39932b (このIDを非表示/違反報告)
せぼね(プロフ) - 万さん» 遅くなってしまいすみません。最後までお付き合いいただきありがとうございました。読んでくださる方の解釈で楽しんでいただける作品になっていれば幸いです。 (2021年10月7日 11時) (レス) id: 315a39932b (このIDを非表示/違反報告)
?(プロフ) - 初めまして、完結おめでとうございます！負け犬の胎動から読ませて頂いておりますが、こんなにハラハラする作品は初めてです。ジンペンなだけにずっとドキドキしながら読ませて頂きました、とても面白かったです…！！次回作お待ちしております。 (2021年9月10日 1時) (レス) id: c8e6d9d1ad (このIDを非表示/違反報告)
万(プロフ) - 完結おめでとうございます。最後まで楽しく読ませていただきました！色々解釈をしてもう一度読み直したいと思います。次回作も楽しみにしております。 (2021年9月9日 14時) (レス) id: cc237cd121 (このIDを非表示/違反報告)
せぼね(プロフ) - カナタさん» こちらでもコメントしてくださりありがとうございます。そう言って頂けて良かったです…！もうそろそろ完結が近づいていますので、最後までお付き合いいただければと思います。 (2021年9月8日 23時) (レス) id: 315a39932b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：せぼね
| 作成日時：2021年8月14日 3時
